「もしもし大丈夫?」
明け方、突然携帯に着信が入った。
目覚ましがなるには早すぎるその時間に、
あたしは小さく震えてそれを手に取った。
受話器越しに聞こえてきたのはすこしかすれた彼の声。
それでいて泣きべそをかいた子供のように、声には不安がにじみ出ていた。
「どうしたの?」
あたしはすこし笑って答えてみせた。
「君が泣いてる夢を見たんだ、白い窓のない部屋でひざを抱えて泣いていて、」
矢継ぎ早に夢の内容を話す彼に大丈夫よ、と保母さんが幼子をあやすように、声をかける。
「あたしは元気だよ、ちゃんと。泣いてなんか―――」
「部屋に涙で池ができていて。君の涙が流れると、ぐんってあがっていくんだ、その池の水面が」
――ああ、その夢の最後で、あたしは。
天井まで届いた涙の池の中で涙を流すの
当然苦しくて、でも部屋から出ることはできないのね?
・・・ぷつっ、ツー、ツー
突然無機質な電子音が耳に刺さる。驚いて画面を見つめても、彼女の名前はそこにはもう、なかった。