新トップコンビ、鳳月杏さんと天紫珠李さんのプレお披露目公演。

宝塚歌劇団月組公演『琥珀色の雨にぬれて』『Grande TAKARAZUKA 110!』をライブ配信で観ました。

 

https://kageki.hankyu.co.jp/sp/revue/2024/kohakuironoameninurete/index.html

 

 

ベル・エポックの香りは遠い、第一次世界大戦後のパリ。

新しい時代の足音も聞こえるパリ。

貴族という旧世界に属するいわば世間知らずの男性と、マヌカンという新世界の女性の儚い恋。

 

何度も再演を重ねている『琥珀色の雨にぬれて』ですが、演じる方によって随分と違う印象を受けます。

鳳月杏さんのクロードはノーブルで、同じ貴族でも資本家となっている銀行家のボーモン伯爵(凛城きらさん)やノアーユ子爵(夢奈瑠音さん)と違う気品を漂わせて、シャロン(天紫珠李さん)の取り巻きとの違和感が際立つように感じました。

クラブ・フルールのNo.1ジゴロ、ルイの(水美舞斗さん)は軽妙で、世間を知り尽くしているはずなのに、どこか刹那的に生きられない。奔放なシャロンの寂しさも虚しさも理解する唯一の人物。

ルイの華やかさが、退廃的なフルールの世界を魅力的に見せているのですが、もう一人、英かおとさんのアルベール。フルールのマダム、エヴァ(白雪さち花さん)がジゴロたちにジゴロの掟を説く場面、フルールでタンゴを踊る場面。英さんの色気が際立って素敵です。

他のジゴロを演じたのが若手さんだったので初々しさがあり、エヴァに様々な指摘を受けるのに深く納得。

純情可憐なフランソワーズ(白河りりさん)が、クロードをニースまで追ってくるところ、オリエント急行に乗ろうとするクロードに別れを告げるところ。フランソワーズの思わぬ強さが垣間見えました。

 

                  ピンク薔薇

 

貴族といっても、革命中1789年8月4日に可決された封建制の廃止で、一度は失った称号です。第一帝政、王政復古、第二帝政で貴族が復活したものの、1871年に第三共和制樹立、ちょうど『琥珀色の雨にぬれて』の時代、第一次世界大戦後には称号だけの存在になっていました。

クロードも友人ミシェル(礼華はるさん)と小さな航空会社を立ち上げ、自分もパイロットになろうとしています。

 

クロードとシャロンの恋は、大きく変わろうとする時代の中で、違う価値観の社会の人間が一瞬交わり交差するしかない、琥珀色の雨のような幻に消える恋だったのでしょう。

 

                  ピンク薔薇

 

先日、パリ・オリンピック期間中に見たテレビ番組で、クロードとルイが乗った青列車、ル・トラン・ブルーの内装そのままのレストランを見ました。

1901年に開業したリヨン駅食堂。

当時の上流階級の旅の豪華さに思いを馳せます。

 

 

カレー・地中海急行がル・トラン・ブルーと称されるようになったのは1922年。

 

 
オリエント急行は、パリからイスタンブールまでを結ぶ長距離寝台列車です。
『琥珀色の雨にぬれて』の頃は、ベルギーを出発点にギリシア、ルーマニアに向かう列車もありました。
 

 

                  ピンク薔薇

 
シャロン、フランソワーズ、クロードの姉ソフィー(桃歌雪さん)のファッションも時代を感じました。
シャロンはポール・ポワレ(春海ゆうさん)のマヌカン(モデル)を務めていて、ポワレがマヌカンを使ってコレクションを開催する斬新さについて語られる場面があります。
デザイナーのポール・ポワレ(1879.4.20~1944.4.30)は1910~30年代にかけて活躍したデザイナー。マヌカンにデザインした服を着せてヨーロッパ・ツアーをするなど斬新な手法で一時代を築きました。アクセサリー、香水、インテリアまで幅広く手掛けたのもポワレです。
しかし、最初にマヌカンを使ってコレクションをしたのはシャルル=フレデリック・ウォルト(1825.10.13~1895.3.10)でした。
 
ソフィーが着ているキモノコート風の衣装はポワレ風、結婚後にフランソワーズが着ていた丈の短いフラッパー・ドレスは時代の変遷を表しています。
 

 

 

 

 

 

 

 
月組の『ピガール協奏曲』から『グレート・ギャツビー』に至る時代といえます。
 
                  ピンク薔薇
 
さて、『Grande TAKARAZUKA 110!』
月城かなとさん、海乃美月さんのサヨナラ公演から一新して、新生月組の誕生でした。
眩いほどのゴールドが、明るく照らす月の光のようです。
 
安定の鳳月さんと躍動感ある水美さん。
大人の魅力の鳳月さんの隣で、このまま水美さんには月組で活躍していただきたい!と思ってしまいました。
天紫さんはスタイリッシュでもあり、可愛らしくもあり、素敵なトップ娘役です。
 
ただ、いつものことですが、アヴァンギャルドの衣装、どうしちゃったの?と思います。
ストリート・スタイルを取り入れるなら、もっと疾走感がないと失敗したダメージのファッションに見えて残念。
これは改善してほしいところです。
 
終盤で鳳月さんと凛城さんの同期場面では、何ともいえない感動。
 
                  ピンク薔薇
 
鳳月杏というスターに強く心惹かれたのは、2012年月組公演『春の雪』の洞院宮治典でした。2023年の『月雲の皇子』の穴穂皇子も美しく、皇子様過ぎます。
 
ずっと応援していた鳳月さんの大羽根に、感激のフィナーレでした。
 
 

 

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