ランスカーソンのシェイプルームを尋ねた時の事だった。
雑談を交えた彼は会話の合間をみて、「今日はオーダーして行くのか?」と問うて来た。
彼から発せられたの言葉の前に、俺があれこれとPIGの質問をしていた事に恐らくランスは俺がPIGをオーダーすると思ったのであろう。
「既に、ミスター矢作にオーダーしているから今日はしないよ」と彼に告げると、彼は「そうか・・・」とだけ言葉を残した。
この出来事から暫く経って、サーファーズの矢作さんから一枚の画像が送られて来た。
「ジーンさんがランスさんにPIGを作れせたんだよ!」と、画像に目を向けるとジーンさんがPIGを小脇に抱えている一葉が目に留まった。
当時、俺がオーダーしていたPIGは以前紹介したこちらのPIGなのだが、ジーン・クーパーが小脇に抱えていたPIGはこれらとは全く異なるスタイルであった。

ストリンガーは'60sピンテール同様のスリーストリンガー。
テールは程好くラウンド掛ったピンテール。
うーん・・・
格好良いけど、「ちょっとイメージと違うかな?」と、当時の印象はこんな感じであった。
しかし、時が経つと不思議なもので、そのラウンドピンPIGが気になって来るから不思議なものである。
そして、最終的にはオーダーする事になった。
ランスへこの事を伝えると「わかった」と、だけ返事が来た。
この2年間・・・
正確に云うと、アダム・ダベンポートがベンチュラに拠点を移す少し前辺りからランス・カーソンのハンドシェイプボードに限り、そのラミネートは彼が全て担っている。
今回のボードも当然ながらアダムが巻いた訳だが、経験値豊富なレジェンドと脂の乗り切った若きクラフトマンの合作には自然と胸が躍って来るから不思議なものだ。
カンちゃんの名で親しまれているサーファーズの神林さんから連絡があったのは初夏に手が届く頃合いの春日和の日だった。
ボードを引き取りに行ってパッキンを開封して、ようやく恋い焦がれていたラウンドピンテールのPIGが姿を現した・・・

相変わらず、ランスのPIGは「良いアウトラインをしてやがる・・・」と、少々格好つけたくなる云い回しになってしまう程の様であった。
シェイプの素晴らしさもさる事ながら、ラミネートも文句の付けようの無い位美しい!
そして、そこに輝くランスのディケールに寄り添うかの様な「SPECIAL EDITION」のロゴも見事である。
ランスのPIGで「最も好き!」と云ったら彼に怒られっそうだが・・・

このフィンが最高に素晴らしい!
ピンテールの機能性を考えてなのか?

テールの最後尾には装着せずに少々手間にオンされているが、フィンはしっかりとテールから食み出している創り様である。
ダノーの巨大なハーフムーンやピーターの垂直に立てられたハーフムーンも格好良いが、このランスのハーフムーンはそれらに匹敵する程の美しさとオーラーを兼ね備えている様に見えてしまう、
その美しさに、そばに居た後輩は「僕はPIG狂じゃないけど、これは欲しくなりますね」と唸る程であった。

兎に角、マリブチップも先に紹介したPIGもそうだが、ランスのハーフムーンは格別に格好良い!


乗るべきPIGが多分になる為、残念ながらまだこのPIGには身体を預けていないのだが、ターンをスムーズに敢行出来るピンテールと同様に程好く効いたロッカーもこのボードの隠し味ではなかろうか?
前回の更新で触れたBINGのフェラールPIGもそうであった様に、ストイックに拘らければサーフボードにロッカーはあった方が絶対に良い。

これはヴィンテージやピーターのPIG乗れば乗る程、それらの恩恵を肌で感じる事が出来る。
技量は未だに初級者であるが、「乗り易いPIGか?」どうかの判断はある程度はボードを見ただけで判ってしまうのもどうかと思うが、このPIGに関しては問答無用で「良い」に決まっている。
かくして、想い描いていたランスのピンテールPIGな訳だが、一つだけオマケが付けられていた。
ご覧の通り、リーシュループに穴が空いていないのだ。

この件に関して、現在、ダベンポートの代理店となっているシースワローの毛塚君に尋ねてみると・・・
「アダム、またやってしまっていますか?」
「彼、結構、この凡ミスをやるんですよね」
ランスが精魂込めて削ったボード、そして、今やカリフォルニアでトップクラスのラミネート技術を持つアダムとの合作はリーシュループの装着が不可欠な日本において、とんでもないオマケとなってしまった。
このボード、乗る前にマーさんこと、石井さんにお願いするしかなさそうだ。
KEEP SURFING