ジョン・ペック・・・
かのジェリー・ロペス並んで神の称号を得た数少ないサーファーの一人である。
彼の事を語る度に必ずと言って良い程、登場するのがこの一葉である。

1963年元旦のパイプライン・・・
右手でレールを掴みながらチューブのインサイド走り抜ける様をパド・ブラウンが撮影した事によって彼は一躍スターになり、神の称号も得る事になる。
この時に彼が乗っていたボードはベルジー・ツリーの一人であるパット・カレンが彼の為に削った9.7ftのセミガンと言われている。
後世のサーファーに多大な影響を与えた彼のラインディングシーンには面白いエピソードがある事をご存知だろうか?
前日の大晦日、彼は親友であるブッチー・バン・アーツダレンのパーティーに呼ばれ泥酔状態なり、翌日の元旦を迎える事になる。
まともに歩けない程の二日酔い陥ったジョン・ペックはブッチー等に両脇に抱えながらビーチへと向かうのである。
その光景は、まるで、映画「ビッグウェンズデー」オープニングシーンだったとも言われている。
酷い二日酔いに見舞われながらも天性の才でパイプラインに入った彼は、踏ん張る事が出来ずに思わずレールを掴んだとサーフマガジンで語っている。
そんな数々の伝説を持つ神様ジョン・ペックは、その数年後に自らデザインしたボードをトム・モーリーと共同で開発し、彼の代名詞となるペネトレーターをリリースする事になる。

ペネトレーターはドラッグテールを採用したノーズライダーの先駆けの様なボードで、後に登場する様々なボードに影響を与えたと言われている。
そんな、ペネトレーターには数種類が存在する事はご存知だろうか?
以前、紹介したこちらのペネトレーターは、その代表的な1本に過ぎ無いと言われている。

今回紹介するのは、これらのペネトレーターとは少々異なるアウトラインを用いたジョン・ペックのパーソナルになる。

ペネトレーターの代名詞であるストリンガーはセンターに1本しか入らず、テールの絞り込みがスタンダード・ペネトレーターに比べると絞られているのが判る。
このペネトレーターの名称は「パイプライン・ペネトレーター」とだそうで、彼が来日した時に自身のパーソナルとして持参したものである。

このボードの面白い所は、ジョン・ペックのパーソナルでありながら、グラスオンフィンになっている所ではないだろうか?

テール形状に合わせてなのか?ヴィンテージのペネトレーターとは全く異なったフィンが装着されている所が同様に面白かったりする。

また、このボードには彼の面白い?拘りも反映されており、数々のビッグウェーブを体感して来た彼は「リーシュカップが一番強度がある」との解釈からカップが採用されている。

そして、このボードには、もう一つの取って置きのスパイスもあったりするのだが、なんと、稀代の天才、ロビン・キーガルが一枚噛んでいるのである。
シェイプ自体は、勿論、ジョン・ペック本人なのだが、アブストラクトにはロビンの手が加わっており、神と天才による究極のコラボレーションボードという訳である。
1944年生まれのジョン・ペックは今年で73歳になる。

彼が邁進し続けるヨガを採り入れても、やはり、老いには勝てないのか?元々少なかったシェイプが近年は著しく減った様である。
年齢を考えたら、いつプレイナーと決別しても可笑しくはない年齢である。
直ぐにでも堪能したい事は言うまでも無いが、今の俺はもう少しPIGと向き合っていたい為、この手のボードは一先ずお預けにしたいと思っている。
そして、神に恥じぬサーフィンが出来た暁には存分に楽しみたいと思っている。
Keep Surfing!