ZOOM GCE-3 オーディオインターフェース レビュー:ギター小話 | ALTERNATIVE SPIN

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2019年に発売されたZOOMのオーディオインターフェースGCE-3。購入から少し経ったので所感と本機が向いている対象などについて書いてみたいと思います。

 

 

 

GCE-3の詳しい仕様はこちら。どんな製品なのかざっくり理解している前提で進めていきます。
 

 

 

 

サウンドキャラクターは「ZOOM」

 

GCE-3はG5n世代のZOOMマルチエフェクターをエミュレートする製品なので内蔵エフェクトのラインナップは実機準拠。

エフェクトが同じということはサウンドのキャラクターも同じ。その音はとっても「ZOOM」です。

 

↑ZOOMっぽさがよく出ていると思う動画。


前世代のZFXと比較すると格段にリアルな音になってきてはいますが「ZOOM的なデジタル感」は健在。特に歪み。

これを好むかどうかは人によりけり。僕は「キャラクターは好みだが不満もある」という評価。

505II以来のZOOM愛好家なのでサウンドキャラクター自体は好きです。しかしながらから昨今の業界が生っぽいサウンドを目指す傾向にあることを考慮するとZOOM的な領域を出たサウンドにも注力してほしいところ。

 

 

 

 

操作性は良くない

 

GCE-3の操作は管理ソフト「Guitar Lab」を使ってPC上で行います。

エフェクトを選ぶのもツマミを回してパラメータをいじるのもマウスで行う必要があるので宅録作業に慣れていない人は少し難しく感じるかもしれまえん。

こちらは実際の画面。

 



こんな感じでエフェクトリストを開いた状態のまま他の枠のエフェクト選択に移る場合、多くの人は別のボタンを直接クリックすると思います。

Guitar Labではそれができません。ひとつのウインドウがアクティブになっている間は他の部分をクリックしても一切操作できないんです(ソフト自体の閉じるボタンも無効化される)

 



念のため言っておくとこういった作りはZOOMに限ったものではなく、USB-MIDI管理ソフトではままあるものです。

 

 

 

 

GCE-3が適している人 その①

 

ここからはGCE-3が適している人について。まずはロースペックPCで宅録をやっている人、もしくはこれから始めたい人。

 

書類仕事などの軽作業用に用意したパソコンしか持っていない場合、DAWが満足に動かないことがあります。

 

DAWの起動はできる。録音も編集もできる。

 

しかし録音する音にレイテンシー(遅延)がある。

 

プラグインのアンシミュを走らせると高負荷になって更に動作が重くなったりDAWが落ちたりする。

 

大掛かりな機材投資をせずに状況を改善したい場合、実機のアンシミュをオーディオインターフェースに繋いでギターサウンドを録音したり、もしくはインターフェース機能内臓のアンシミュを直接繋いで録音するのが最もローコストかつ手軽な方法です。

 

名機G2.1uが出た頃からそういう環境で宅録をしている人は少なくないと思います。誰しもが万全な環境を整えられるわけではないし、整えたいと思っているわけでもないですから。事実、ZOOMマルチはその層から大きな支持を得ていました。

 

GCE-3もまたその役を担う存在です。

 

GCE-3のエフェクトは本体に内蔵されているDSPが担当します。どんなにエフェクトを重ねようともPCに負荷を掛けることはありません。PCが担当するのはDAWとGLだけです。

 

GCE-3のヘッドフォンアウトからは常にGCE-3が処理したギターサウンドが鳴っています。いわゆるダイレクトモニタリング状態。

 

DAWのトラックモニターをオフにして録音すればニアゼロレイテンシーという謳い文句の通りきわめて小さいレイテンシーで演奏できます。

 

録音結果に生まれたズレはいくらでも編集で直せるのでPC設定は録音自体がもたつかないようにしておけばOK。

 

 

 

 

GCE-3が適している人 その②

 

GCE-3はすでに上記のような実機アンシミュ+インターフェース環境で作業している人にもおすすめできます。

 

GCE-3に内蔵されているマルチエフェクターは

 

・ギター系:G5n、G3n、G3Xn、G1 Four、G1X Four

 

・ベース系:B3n、B1 Four、B1X Four

 

・アコースティック系:A1 Four、A1X Four

 

の合計10種類。

 

同系統内で被っているエフェクトが多々あるとはいえ、これだけの数のエフェクターを実機のようにケーブルを抜き差しすることなくソフトウェア上で切り替えながら作業できるんです。

 

机上の場所も取らない。手間も掛からない。これだけ出来てお値段1万円程度。コスパが良いなんてもんじゃありません。

 

ミニマムな宅録作業と練習に最適なアイテムといえます。

 

 

 

 

基本はライトユーザー向け

 

ここまで解説してきた通りGCE-3は最低限の環境で宅録をする人にとって非常に役立つアイテムですが、一方で本格的な宅録を行いたい人にとってはベストな選択肢にはならない機材です。

 

入力ゲインの調節ができない。

 

 

アウトプットはステレオミニのヘッドフォンアウトのみ。フォーンアウト無し。

 

アウトプットレベルの調節はダイヤルのみ。

 

サンプリング周波数は44.1 kHz。A/D、D/Aは24bit。

 

これを見て戦力不足と感じる人はそもそもGCE-3のターゲットではないのだと思います。

 

もちろん出先でデモ録りする用とか、寝室に置いたネットブックで操作して遊ぶ用とか、自分なりの用途が思いつくのであれば買う価値あり。

 

 

 

 

予想外の追加エフェクト「KRAMPUS」

 

2020年10月のアップデートでG5n、G3n、GCE-3に3種類のエフェクトが加わりました。

 

ダブリング効果を再現できるエフェクト「GEMINOS」

 

そして『モダンハイゲインアンプの重厚な低域と80'sブリティッシュアンプのようなブライトさを併せ持つ』とされるZOOMオリジナルアンプ「KRAMPUS」とそのキャビネット。

 

これらはすべて最新マルチZOOM G11に内蔵されていたエフェクトです。G11の中でも特に人気(っぽかった)エフェクトが既存機種に降りてきた。この展開は流石に予想外でした。G11はZFXの世代(系統)が既存機種とは異なると思っていたので。

 

 

 

 

 

このKRAMPUS、かなりいい感じです。ソロにもバッキングにも合う適度なブライトさ。ハイゲインと銘打たれている通り結構歪むのでこれをインサートしたパッチの歪みはこれだけでOK。というか負荷レベルが高いのでKRAMPUS以外のエフェクトはあんまり置けません。

 

サウンドを聴いてビビッと来た人はKRUMPUSのためだけにGCE-3を買うのもアリだと思います。大げさに聞こえるかもしれませんが、GCE-3は現状最も安価にG11世代のエフェクトを体験できるマシン。ペダル1個買ったと思えば高い買い物ではないでしょう。

 

しかし…実際に使ってみたKRAMPUS、そしてサンプルで聴いたVELVETなどから判断するに、ZOOMはレジェンドアンプのモデリングよりも独自アンプの方が上手なんじゃないかと思います。元ネタがあるのかもしれないけど明記しない程度にはオリジナルなアンプ郡。非常に魅力的です。オールオリジナルエフェクトのマルチとか出して欲しい。

 

今の御時世マーシャルやフェンダーに憧れを持っていないプレイヤーは少なくないはず。そういう世代が純粋に音の良さと使い勝手の良さに惹かれて手にするようなマルチが欲しいな。

 

 

 

 

大満足の新機材

 

最後に僕自身の総合評価を。

 

正直大いに満足しています。

 

たった1万円でロースペックPCでニアゼロレイテンシ録音できる機材が手に入る。

 

BやAといった自分のメイン楽器ではないジャンルのエフェクトも手に入る。

 

ミニプラグのイヤモニや装着感の良いゲーミングヘッドホンなどを変換コネクタなしで接続できる。

 

実は電源さえ繋げばPC無しでも動作する(GuitarLabで最後に開いていたパッチの音が鳴る。操作は不可)

 

Cubase LEのコードも付属している。

 

レコーディング遊びをするのにも、練習で使うのにもめちゃくちゃ役に立っています。買ってよかった。

 

宅録入門者、プチ宅録マン、PCデスクに腰掛けてギターを弾く人(PCが身近にある人)、ホームユースな機材構成で音楽をやりたい人。

 

そういう人は買って損なし。発売から1年ちょい経った今でもおすすめの機材です。