秋晴れの雲一つない清々しい20日日曜日、
世田谷の伝統大蔵ダイコン収穫イベントが開催されました。

イベント企画担当は、世田谷区在住の鈴木規世枝さん。
お邪魔した生産者の方は、世田谷区の環八道路を隔てたところに圃場をもつ大塚信美(のぶよし)さん。
環八の大通りを一本入っただけで、別世界のような住み心地のよさそうな住宅地が広がり、その一角に大塚さんの圃場がありました。
東京に農地があることをあまりイメージできない方も多いと思いますが、世田谷区は、練馬区に次ぐ2番目の規模を誇っています。
そして、前区長時代から引き続き、区を挙げて「33%緑を残す」取り組みをされています。
農業・農地を活性させるだけではなく、それを通じて、地域の景観にも配慮しつつ、環境保全や食農教育の場、防災空間など、多様な機能を作り出している魅力ある地区です。

もちろん、世田谷区の取り組みの中の「食農教育」という面で大塚さんのご尽力の大きさを感じる今回のイベントでもありました。
 

大塚さんは、平成9年に、世田谷区農業青壮年連絡協議会会長の折に、この地でかつて栽培されていた「大蔵ダイコン」を復活させる事業に取り組まれたのが栽培のスタートになります。現在では、種を自家採取し栽培され、固定種の「伝統大蔵ダイコン」を生産されています。
他にも、年間25品目を栽培されており、生活者のニーズに応じた多品目高品質生産を心掛けておられるそうです。
 
大蔵ダイコンは、江戸時代に、豊多摩郡、今の杉並あたりに源内という方がつくった「源内つまり大根」が原種といわれています。円筒型で先端が丸くつまっているのが特徴なのですが、
青首ダイコンと違って、そう簡単には引き抜くことができないダイコンです。
 

さあ、いよいよ収穫体験です。
前日は雨が降ったので、抜きやすいだろうとのこと。
まずは、大塚さんが、収獲するコツを私たちに見せて下さったので、一見、できそうかなあと高をくくっていたのですが、その甘い考えは葉をまとめて掴み、引き抜こうとする恰好をしただけで、困難なことがわかりました。

まもなく大塚さんが助けにきてくださり、力を込めてスイっ!
ふっくらした白い様相をした伝統大蔵ダイコンが土から顔を出しました。
大塚さんが、「収穫したときのみんなの笑顔がいいんだよ。」
そう笑顔でおっしゃっていた言葉が印象的で、収獲するときの喜びは何にも代えがたいなあと実感でした。と同時に、作り手のご苦労も感じいることができました。


収穫後は、「伝統大蔵ダイコン」を生で試食させていただきました。
果肉が緻密で瑞々しく甘みも強く、部位によっては、ピリッと心地よい辛味もあり、やはりおいしさ満点です。
そして、大塚さんの「伝統大蔵ダイコン」への想いを聞かせていただきました。
種を自家採取される方法や、その種も現物を見せていただきました。
マルチを張る栽培とそうでない栽培との生育の違いなどもうかがうことができました。
 
農業を代々続けて100年以上、温暖化や風水害により農産物は大きな影響を受けてしまいます。しかし、大塚さんは、それを言い訳にされません。
気象は変わり、動いていますが、その中でできることを精一杯真摯に取り組もうとされる姿に感銘しました。
大自然の恩恵をもらい、そして感謝の気持ちで向き合う。
それは、伝統を守り、次世代に引き継ぎ、伝えていこうとする大塚さんのきっとごく当たり前のことなんだろうなあと感じました。
江戸東京野菜である「伝統大蔵ダイコン」を通じて、大塚さんから大事なことを教えていただいた、とても有意義な楽しいイベントでした。


お世話くださいました鈴木さん、
そしてご一緒させていただきましたコミュニティTOKYOメンバーのみなさん、ありがとうございました!
 

レポート:若林牧子