超高齢化社会下の日本では、認知症予防は関心度の高い話題です。
日常生活は自立していて、ちょっと認知障害があるような状態を軽度認知障害(MCI)と呼んでいます。
このMCIの時に色々と介入すると、可逆性は10~41%で認知障害から正常に戻り、
MCIから認知症になると、ほとんどの場合一方通行で戻らない、と言われています。
ある研究での報告は(Canevelli et al. Front Med 2017)
MCIから正常に戻った 18%
MCIのまま不変 37-67%
MCIから認知症になる 5-15%
80歳のMCIでは2~3年で約半数が認知症に進行するそうです(Neurology 2012)。
MCIから正常に戻りやすい要因としては、
遺伝因子(Apo E4-がない)
社会的要因(年齢が若い、教育歴が高い)
臨床的要因(神経疾患以外の併発症がない)
身体機能(生活が自立している)
MCI病型(非健忘型、単一ドメイン)
認知機能(神経心理検査の好成績)
脳画像(海馬委縮は軽度)
MCIから認知症に悪化する要因としては
CAIDE risk scoreで見ると、上の血圧、肥満、身体活動不活発
Framingham risk scoreでも高血圧、HDL-コレステロール、総コレステロール、喫煙、糖尿病が関連していたようです。
(Kaffashian et al. Neurology 2013, Exalto Et al, Alzheimers Dement 2014, Canevelli et al. Front. Med 2017)
以上の研究から、認知症の危険因子・相対危険は (Livingston et al. Lancet 2020)
45歳未満 教育歴が低いこと 1.6
45-65歳 聴力障害 1.9
外傷性脳損傷 1.8
高血圧 1.6
アルコール過剰摂取 1.2
肥満(BMI30以上) 1..6
65歳以上 喫煙 1.6
うつ 1.9
社会的孤立 1.6
身体不活動 1.4
糖尿病 1.5
大気汚染 1.1
だそうです。
MCI発症年齢は平均して89.9歳ですが、歩行速度はMCIの5~15年前にガクンと落ちるそうです。
つまり、歩行速度が落ちるとMCIになるかも、と予測できるかも、ということです。
(Buracchio et al. Arch Neurol 2010;980-6)
50歳以上で認知症予防に良い運動・身体活動の改善効果の推定量はメタ解析によると
有酸素運動 0.24
筋力トレーニング 0.29
太極拳 0.52
1回あたりの時間
45分未満 0.09
45分~60分 0.31 で、45分以上がお勧め。
頻度は
2回以下 0.32
3-4回 0.24
強度は
低 0.10
中 0.17
強 0.16
中~強が良いですが、低強度でも改善が期待できます。
運動は60分/日 週2~3回、半年以上 仲間と楽しく、継続が大切。
(Northey et al. Br J Sport Med 2018)
頭を使いながら有酸素運動を行うコグニサイズを毎週90分×10ヵ月で、海馬でBDNF発現し、脳血流改善、インスリン抵抗性改善などが見られたそうです。
(Shimada et al. J Am Med Dir Assoc.2018)
日本で13984人の高齢者を平均10年間観察した研究では、
社会参加(婚姻関係・家族のサポート・友人がいる・社会活動への参加・有給の仕事の5項目)が最高群は最低群に比べて認知症発症が46%も低かったと報告されています。
(Saito T, et al. J Epidemiol Community Health 2018)
高齢期では肥満が認知症に予防的
40-59歳 認知症になるリスクは BMI30以上で1.91倍ですが、
60歳以上だと、BMI30以上で0.8、25以上で0.79とリスクが低下するのです。
認知症発症の10年前から体重は減少する
ビタミンB、C、Eといった単一の栄養素が良いのではなく、食事から摂る。食事全体のバランスが大切。
葉酸、ビタミンB群、n-3(魚)、オリーブ油とナッツ、地中海食
中年期はメタボリックシンドローム対策を。
高齢者では、低栄養にならないように気を付ける。
久山町研究 認知症リスクと食事パターンをみたところ、
豆類、野菜、海藻、牛乳、乳製品を多く摂取し、米類は少ない高齢者では、
全認知症でリスクが0.66、
アルツハイマー型認知症 0.65
脳血管性認知症 0.45
といずれも認知症になるリスクが低かったそうです。
(おざわら AJCN2013)
認知症予防に効く、と言われることを色々ご紹介しましたが、単一ではあまり効かない。
世界的な研究では、多因子介入(食事、運動、認知機能)が効果的と言われています。
FINGER Lancet2015
バランスの取れた食事をし、活発に活動し、認知機能も鍛えて、社会活動に参加して、認知症予防をしましょう~