近況を報告できていませんでしたが、前回の記事更新後、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』に加えて『マイ・ブロック』も観始めました。どちらもシーズン2の後半です。最近はNetflix中毒で帰宅すると手が震え出し、その手の震えも加味した距離からMacBookの電源ボタンを押しています。

 

 

 

 

さて、その『マイ・ブロック』シーズン2-2でこんな場面がありました。

 

ある朝、ジャマールという登場人物が2人の友人を引き連れてとあるミッションに出かけるんですが、ルビーという別の頭脳明晰な友人から欠席の連絡が入るんですね。「朝まで待たせて欠席かよ」と不満げなジャマールに対して、モンセという女の子は「彼は待たせたんじゃなくて、死にたくないんだよ」と理解を示します。というのも、ちょうど彼らの住むエリアでギャングの抗争があって、危険な時期だからです。リル・ウェイン(Lil Wayne)が言うところの"Tha Block Is Hot"ですね。

 

そこでジャマールの放った一言が、こちら。

 

Potato, potato

 

文字だけ見ると「え、ポテトポテト?」と思われるかもしれませんが、実はここでの"potato"は前者が[pəteitou]、後者が[pəta:tou]と発音されます。両者は発音こそ違えど意味するものは同じ。「どちらもさして変わらない」「その違いは重要でない」ということを言うときに使う表現です。ジャマールにしてみれば、ルビーが朝まで待たせて欠席したにしても、死にたくないから来なかったにせよ、彼が居ないという意味では同じこと。それを"potato"で表現しているわけです。ちなみに、Netflixの英語字幕では両者の発音の違いを強調するため、"Potato, potahto."と出ていました。

 

 

この表現を聞いて思い出したのが、『Revenge Of The Dreamers III』収録のこの曲です。

 

Dreamville - Down Bad ft. JID, Bas, J. Cole, EARTHGANG & Young Nudy

Image via @RapUp on Twitter

 

 

JIDのヴァースにこんなリリックがありますね。

 

Let a nigga cover FADER 'fore I have to fade a nigga at The FADER FORT
It's tomato or tomato, either way, the boy the greatest

 

ここでの"let"はいわゆる使役動詞で、"let ... do"の形をとり、「[人]に〜させる」という意味になります。"'fore"は"before"の略です。

 

したがって、前から順に意味を取っていくと、

 

させろ(Let)

(誰に?)

俺(a ni**a)に

(何させろって?)

FADERの表紙を飾ら(cover)せろ

(いつ?)

…の前に('fore)

(何の前に?)

誰かを葬らなきゃいけない(have to fade a ni**a)前に

(どこで?)

The FADER FORTで(at The FADER FORT)

 

となり、和訳すれば

 

「俺がThe FADER FORTで誰かをやっちまう前に、FADERの表紙を飾らせろ」

 

「俺をFADERに載せてくれよ、The FADER FORTで誰かをやっちまうぞ」

 

などとなります。

 

そして、2行目に出てくるのは"It's tomato or tomato"です。ここでも2つの"tomato"は発音が異なります。"potato"の代わりに"tomato"でもいいんですね。JIDに言わせれば、FADERの表紙を飾ろうが、その機会に恵まれずThe FADER FORTにおけるパフォーマンスで人を圧倒しようが、自分がグレイテストであることには変わらないということなのでしょう。

 

 

最後に、孫正義さんの有名な発言にインスパイアされた例文を記します。参考にしてください。

 

A: It's not that my hairline is going backwards. I mean... I'm moving forward, you know'm sayin'?

(生え際が後退してるんじゃないんだ。なんていうか…俺が前進してんだよ、分かるだろ?)

B: Tomato, tomato!

(どっちも変わんねーわ!)

 

Aのセリフは"I'm"と"forward"を強めに言うとそれっぽくなります。

 

 

 

 

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