TIDAL限定リリースから1週間経って、日本でもようやく

聴けるようになった、Jay Z改めJAY-Zの『4:44』。

 

 

JAY-Z, 4:44

 

 

変に凝ってなくて、全体的に落ち着いた雰囲気で、50 Cent

が「ゴルフコースの音楽」って言ったのも解るけど(笑)、

これはこれでいいなという第一印象でした。

 

すでにいろんな方が素晴らしい解説をされているので、

こちらとかこちらとかこちらを読んでいただければと思うの

ですが、本記事では個人的に気になった「Kill Jay Z」に

ついて書きたいと思います。

 

 

JAY-Z - Kill Jay Z

 

 

「JAY-Zの名前にハイフンが戻ってきて全部大文字表記に

なった」という記事を、『4:44』リリース前に読んだので、

「過去の自分と決別して心機一転」みたいな内容の曲なの

かなと予想していたのですが、蓋を開けてみるとそこまで

単純な話ではなく、

てめぇの兄を撃ちやがって、F*** Jay Z(注:実際に撃った)

娘がいるんだから丸くなれよ

お前はお前に惚れた若者に真実を伝える責任があるんだぞ

お前は愛する人々にドラッグなんかを売ってたもんな(注:実際に売っていた)

Un (Rivera)を刺しやがって、「あいつは喋りすぎた」っていうのが言い訳か?(注:実際に刺した)

(不倫が原因でハル・ベリーと離婚した)エリック・ベネイみたいになるとこだったぞ

といった具合に過去の自分をひたすらディスっていました。

 

これを例えばNasが言うのであれば意外でもないんですが、

自虐の文化から一番遠い位置にいる(と自分が思っている)

JAY-Zがこんなことをラップするのが意外で、

"Tf is wrong wit u, Hov!?"

という感想を抱きました。

 

ラッパーが曲中で自らを殺すという構想は珍しくなくて、

最近で言えばそれこそKendrick Lamarの『DAMN.』でも

1曲目の「BLOOD.」でKendrick自身が盲目の女性に

撃たれていますが、「Kill Jay Z」を聴いて思い出したのは

それよりも、Eminemの「Bad Guy」のほうでした(和訳は

こちらこちら)。

 

同曲の4ヴァース目を聴いていただければ解るとおり、

Emは、コケにされてきたリスナー(主に女性と同性愛者)

を代表するMatthewから報復を受ける結果となっています。

 

キャリアの初期に、犯罪行為に手を染めていた過去の自分を

省みて

「俺はきっと天国になんか行けない」

「カルマが迫ってくる」

「いっそ死んだほうがマシかもしれない」

みたいことを題材にするラッパーは少なくないですが、

ラッパーとしてのキャリアを歩み始めた後の自分のことを

こんな感じで語るというのは、彼らだからこそできる芸当

だなと。

 

JAYもEmも40代半ばに差し掛かって、「禊」の必要性を

感じ、その場として自身の楽曲を選んでいるというのは

面白いなと感じます。

 

前にZeebraさんが

「ヒップホップも誕生して30年以上経ったから、クラブだけ

 じゃなくて、落ち着いて楽しめる場を提供したい」

みたいなことをツイートされていたのを記憶していますが、

そっか、歴史が長くなるとメインストリームでもこういう

ことが起こるようになるのか!という発見でした。

 

 

ちなみにそのJAY-Zさん、今回のアルバムに収録されている

「Bam」という曲で、脚が細すぎることにも言及されてて…

 

 

俺も脚細いから他人のこと言えないし、余計なお世話だとは

十分解ってるけど、このバランスの悪さだと将来寝たきりに

なること請け合いだから、脚も鍛えてほしい…なんてことを

思ったのでした(笑)。