ドイツ鉄道の遅延について考える | ヨーロッパ散策記

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ドイツ在住3年を超えました。週末せっせと出歩いた記録です。

ドイツ鉄道が酷く遅れることは在住者はもちろん、旅行に来られる方にも知れ渡っています。

今年はFinancial Timesにも、英国以上にポンコツなドイツ鉄道という記事になったりしていました。私ももちろん各種トラブルは経験済み。


それにもめげず、せっせと利用していたら、ドイツ鉄道ゴールドステータスを達成しました。

今の瞬間は下回っていますが、直近1年で2,500€使えばポイントプログラム(Bahn bonus)加入者にラウンジや車内販売の飲み物、ゴールド会員以上専用のスペースの予約など悪くない特典ががあります。(年間1,500€で達成するシルバー会員もあり、それでも結構なメリットがある)。


ゴールド会員達成記念で表題について勝手なことを書き連ねてみようと思います。ドイツ鉄道のサイトにある開示資料とAIさんの出典がまともそうなのから選びました。 

文章ばかりで長くなりそうです。興味のある方はぜひ一読ください。


因みに以下全て快速(RE)や鈍行(RBやS)は除きます。長距離を走るREなどはICやICE同様ガッツリ遅れますが、データは普通列車カテゴリーになるので。およそ90%は定時ということになっています。


【遅延の定義と実績】

ドイツ鉄道の統計では、6分以上の延着で遅延と定義されていて、ESG開示資料である統合報告書でも2023年の長距離列車(IC/EC/ICE)の定時到着率は62.5%と開示されています。ちなみに2024年上半期データでは62.7%。史上最悪だった23年と比較しても大して変わりません。


注意が必要なのは6分未満の遅延は定刻とカウントされ、途中駅で遅れても終着駅に6分未満の遅れまで挽回すればノーカウント。主要駅の停車時間をカットなどして案外挽回することもあります。


実際の体感に近い途中駅を含む下車駅ベースで定刻率を計算すると67.5%。当たり前ですが始発からいきなり遅れるより途中でズルズルと遅れていくパターンが多いのだから、3分の2はそこそこ定時近くで電車を降りているという話です。体感では半分以上は遅れているように思うのですが、定刻が当たり前の日本人感覚のバイアスも含まれているのでしょう。


【ガチ定刻のデータはあるか】

探してみたらありました。23年で定刻1分以内に到着した電車は全体の37%。日本の感覚だと3分の2は遅延するわけで、そりゃ定時に着かないと思うのも当然ですね。経験上も5分の乗り継ぎは殆ど失敗しています。


【データに含まれないものはあるか】

これは驚きだったのですが、列車が始発もしくは途中でキャンセルになるケースは遅延の計算に含まれません。(すみません。ここだけは原典が怪しい)


日本だったらテレビニュースになりかねない予約した/乗った列車が終点に辿り着かないケースは長距離列車の4%。13,600本が終着に辿り着かなくてキャンセルとなりました。

25本に一本だからなかなかの確率ですが、これが定時運行のデータ算出では無かったことにされています。これを含めると、単純計算で定時到着率は悪化して60%の6分以内到着となるわけです。


【ドイツ鉄道にとっての損失は?】

信用リスクというか顧客満足度や間接費のアップを定量化したデータは見当たりませんでしたが、23年度に約200百万€(今のレートならざっくり350億円)の遅延による返金をドイツ鉄道は行ったそうです。

Passenger Rightとして、60分以上の遅延で運賃の25%、120分以上で50%。遅れたので旅行取りやめた人は全額返金なのですが、全員が請求しているとは思えないもののこの金額。アドミ費用節約のためかアプリから簡単に請求可能になっています。


【他国への影響】

国際列車に乗るとドイツに入った瞬間に電車が遅れ始めるのはいつものこと。乗り入れ先の隣接国もこのドイツ鉄道のパフォーマンスには迷惑をしていて、3分以内の定刻運行率がざっくり95%のスイス国鉄は昨年あたりからドイツからスイス国内に乗り入れる特急が国境駅で10分以上遅れて着いたら、そこで強制打切りという運用になりました。ハンブルグからチューリッヒ行きのEC7が国境駅のバーゼルで打ち切りになる率はだいたい11-12%とか。

使う場合は心の準備が必要ですね。


ハンブルグからコペンハーゲンに行く特急に乗った時もドイツ国内で40分遅延し、デンマーク国内に入った最初のアナウンスは、当列車は特に理由もなく40分遅延してデンマークに入りました。でした。デンマークに入った途端に英語の放送が加わるおまけ付き。ドイツでも英語を話す車掌はドイツ語と英語で案内してくれますが、トラブル時はドイツ語のみの説明になり、何が起こっているのか分かりません。


稀に隣国からの国際列車でドイツに入る前に遅延しているケースもありますが、そのケースではドイツ国鉄のアプリ上で「他国で遅れました」と勝ち誇ったように記載されます。自己肯定感の強い国民性は強いなあとその度に感じたりします。



ドイツ人の皆さん、ドイツ鉄道に遅延の話題は身近なことだけに盛り上がりやすいです。

アイスブレーカーのネタとして使っていただけたら望外の喜びです。