豊かな生活は一変疎開したーヵ月後、5月に渋谷周辺は大空襲に見舞われて、徳三郎は渋谷川に飛び込んで火の手を逃れ、マンホールの中で九死に一生を得ました。軽井沢まで戻ってきた徳三郎の顔は、たくさんの死者を見てきたからか、死霊のような形相をしていました。この空襲で、新婚生活を送った家は僅か2年で跡形もなく灰と化し、家にいた4人が亡くなりました。もし私も残っていたら、幼い長女を抱えて逃げおおせるわけもなく、死んでいたに違いありません。軽井沢が命を助けてくれたのです。けれども豊かな生活は一変しました。