トラえもん!? -7ページ目

トラえもん!?

十代前半の和泉式部、定子、紫式部の三人に二十代の清少納言を加えた四人が中心の百合的日常。史実とは異なりますが、平安時代の女の子たちなので頻繁に和歌を詠みます。
『マーシュの魔術労働』はオリジナルの魔法学園もの

※昨日の続き

~永祚元年正月二日~
(語り:諾子)
許子(もとこ)さんが持ってきてくれたお菓子は十六個あり、一人ひとつずつでも定子さまと私と女官全員に行き渡る。
しかし若い女官たちは一個を二人で半分こして食べていた。主への遠慮ではなく、そうすることを楽しんでいるのだ。
貴族の御所に仕える女たちの中には、主を訪ねて来る若い男が目当てという者もいるが…なにぶん定子さまは入内をひかえた大切な姫君。無事に次帝の母となるまで悪い虫がつかぬよう、そのような男は追い払ってよいと御父上より仰せつかっている。
…その私こそ誰あろう定子さまを狙っているわけだが。
「許子さん…可愛らしい方でしたね」
そんな想いをよそに、定子さまは許子さんに御執心の様子。
「手を出してはいけませんよ」
許子さんは昌子太皇太后宮に仕える身。あちらで任を解かれないかぎり勝手に連れてくるわけにはいかない。
入内を目論む定子さまのもとへ太皇太后宮の使いが来たと最初は身構えたが、歳の近い定子さまと仲良く笑い合う許子さんの姿に他意は感じなかった。これに関してはこちらの取り越し苦労であろう。
「…さ、書き初めでも致しましょう」
心静かに、雑念を払うべく書をすすめるが…
「嗚呼、許子さん…画数が多いわ」
ごんべん(言)の部分が意外と難しく“許”を大きく書きすぎて“子”が隅に追いやられ、紙からはみ出した墨が床にくっきりと残ってしまった。
「許子さんの名を書いて何処に飾る気ですか汗
私の“諾”のほうが画数は多いけど…
「枕の下に敷いて寝たら、いい初夢が見られるかしら?」
それなら許子さんのお菓子の包み紙にでも書けばよかったのでは…とは言わないでおく。
「そういえば…何故初夢は二日の夜の夢なのでしょうね?」
初詣や書き初めのように新年を迎えて最初の、ということなら元日の夜の夢でいいと思うけれど…
「だって、昨夜ではまだ許子さんに逢えませんもの」
…そうきたか(ノ∀`)
大江許子…思いのほか手強い恋敵になりそうね。

~太皇太后宮御所~
(語り:許子)
「…くしゅん!><」
「あら許子、おみやげに風邪をもらってきたの?」
このひとは私の母。今の私くらいの歳の頃から昌子さまに仕えている。
「いえ、そんなはずは…咳をなさる人にも遭っていませんし」
「それならいいけど…今日も冷えるようだから、暖かくして居なさい」
掻取を掛けてくれた。
「ありがとうございます´`」

(つづく)