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トラえもん!?

十代前半の和泉式部、定子、紫式部の三人に二十代の清少納言を加えた四人が中心の百合的日常。史実とは異なりますが、平安時代の女の子たちなので頻繁に和歌を詠みます。
『マーシュの魔術労働』はオリジナルの魔法学園もの

※昨日の続き?

~永祚元年正月三日~
(語り:定子)
今日も許子(もとこ)さんに逢えれば…と思ったけれど、
「定子さま。稲荷山の社へ詣りましょう」※現在の伏見稲荷大社
…と諾子(なぎこ)さまが仰るので初詣に行くことになった。
「稲荷山でしたら初午※の日に行けばよろしいのに…」
※8世紀ごろ倉稲魂命(ウカノミタマノミコト)が稲荷山に降臨したとされる旧暦二月の最初の午の日。
「初午の日にもまた詣ればいいのですわ。…さ、支度なさいませ」
倉稲魂命…またの名を嚴稻魂女(イヅノウカノメ)。いずれも稲の名を冠する五穀豊穣の女神といわれる。
稲荷というからには狐の女神になるのかしら?…でも女狐と言うとなんだかあまりry
「お天気が優れないようですわ」
着替えて外へ出たが、白く曇った仄暗い空が寒々しい。
「そうですね…」
せっかくのお出かけなら晴れた日がいいし、
「やはり今日はやめておきましょうか?」
「何を仰いますやら…さ、参りましょう」
ちぇ(`ε´)
稲荷山の麓までは牛車で行けるが、稲荷社の本殿は山中にあるので参道を歩いて山を登る。
※現在の本殿は稲荷山の麓にあるが、応仁の乱で焼失する前は山中に建てられていた。
「あら…? こんなところに祠があったかしら?」
稲荷山には毎年来ているけれど、山そのものが神域となっているため広く、一度や二度の参詣ではなかなか隅々まで歩けない。
「祠は長者社への道標となっているようです…ほら、あちらにも」
少し離れたところにまた祠が見えた。山の上へ上へと小さな祠が幾つも連なる。
「長者社?」
「社殿の傍に御神体の剱石があるのです。賀茂玉依姫を祀っているとか」
倉稲魂命のほかにも稲荷山に祀られた神様がいるのね…
「聞いたことがありませんわ」
※玉依姫(たまよりのひめ)は巫女にあたる存在で、平安時代の多くの女性と同じく名前の記述がない。古事記などが書かれた当時は神々よりも下位の扱いだったと思われる
「賀茂建角身命の娘で、賀茂別雷命の母だそうですよ」
「へえ…別雷命って何の神様ですの?」
「さあ…」
豊穣の神、学問の神、恋愛の神…人々の生活に根ざす信仰にはそれぞれの目的がある。何の神なのか知られていない神の、名もなき母となると…
「…行ってみましょう」
誰かが気に留めなければ忘れられてしまいそうに思えて…倉稲魂命より賀茂玉依姫が気になってしまう。
小さな祠を一つ一つ辿り、社殿を目指す。

(つづく)