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トラえもん!?

十代前半の和泉式部、定子、紫式部の三人に二十代の清少納言を加えた四人が中心の百合的日常。史実とは異なりますが、平安時代の女の子たちなので頻繁に和歌を詠みます。
『マーシュの魔術労働』はオリジナルの魔法学園もの

※昨日の続き

~永祚元年正月三日 山城国伏見・稲荷山~
(語り:諾子)
女の子たちのじゃれ合う声が聞こえてきて…長者社と思しき山の上の社殿が見えてくると、
「…あ、あーっ!」
注連縄を掛けられた大石の前にいる女の子を見つけて、叫ぶ定子さま。
「定子さまに…清原さん。ごきげんよう」
許子(もとこ)と、もう一人定子と同じくらいの年頃らしき少女がいる。
「許子さん…何をなさっているのです!?」
もう一人の少女は許子に抱きついて胸や尻を触っていたようだが…
「わ、私は何もしていません><」
慌てて離れる許子。
「おめぇさん…っと、お知り合いでしたの?」
何事もなかったようにすまして言う少女。
「ええ…わたくしは定子と申しますが」
ちら、と隣の少女に視線を移す定子さま。愛しの君にまとわりつくこの女は何者!?と言いたそうだ(言わないけど)。
「幼なじみの香子さんです」
「紫とお呼びくださいな」
「紫さん…覚えておきますわ」
顔には出さないようつとめているけれど、定子さまが香子を快く思っていないのが伝わってくる(ノ∀`)
「清原諾子です」
一応私も名乗っておく。
「ここが長者社…でよろしいのかしら?」
「おそらくは…これが件の剱石ですね」
「長者社?剱石?」
「知らずにいらしたのですか?」
まあ、知っていたら御神体の前でじゃれ合うようなことはない…かもしれない。
「こちらに賀茂玉依姫が祀られているそうですよ」
私にもわからないことは多いが、知っていることはひととおり話しておく。
「まさか、ここで許子さんに逢えるなんて…」
「本当に…奇遇ですね」
小さな社の傍に、ぽつんと佇む剱石…なんだか寂しげな感じ。
「わたくし、供花を買って参りますわ」
予め用意してくればよかったが…確か本殿への参道に花売りがいるはず。
「あしも腹が減…いえ、お腹が空きましたので何か食べる物を探してきます」
香子がついて来た。定子さまと許子を長者社に残し、私たちは本殿への参道に戻る。
「清原殿は定子さまの女房でいらっしゃいますの?」
香子は大人に対しても物怖じしないようだ。
「いえ、正式にお仕えしているわけでは…」
定子さまの父君に頼まれた目付役のようなものだと説明した。
「伏見へはよくいらっしゃるのですか?」
私が長者社を知っていたからか、そう尋ねる香子。
「ええ、毎年来ています。稲荷山の神域には、ほかにも多くの神々が祀られているのですよ」

(つづく)