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トラえもん!?

十代前半の和泉式部、定子、紫式部の三人に二十代の清少納言を加えた四人が中心の百合的日常。史実とは異なりますが、平安時代の女の子たちなので頻繁に和歌を詠みます。
『マーシュの魔術労働』はオリジナルの魔法学園もの

※この日記はフィクションです。妄想ですので(一部参考にしていますが)史実とは異なります

時は永祚元年(西暦989年頃)。昌子太皇太后宮さまに仕える私は、久方ぶりに幼なじみと顔を合わせた。
「…という話なのだけれど」
御所で小耳にはさんだ、噂好きの女官たちの四方山話をそのまま友人に話して聞かせた。
「するってえとなにかい、道隆某の旦那は三后の御法度を破ろうってのかい?」
東国の田舎の漁師みたいな口調でまくしたてる少女。
「しーっ、紫さま声が大きいですってば」
紫(後の紫式部)と名乗る彼女こそ、私の幼なじみ。
「なにがしと言いつつ名を伏せてないし…」
ちなみに道隆というのは藤原道隆のことだが、
「そりゃ、あしの親父も藤原某だからねえ…っと、それより聞き捨てならねえのは」
そう言って拳を突き出し、私を小突くふりをする紫さま。一瞬思わず目を瞑ってしまった(ノ∀`)
「“さま”なんかいらねえってんだよ。他人行儀な言葉遣いしやがって、まったく宮仕えってのは堅っ苦しくて肩こっていけねえや」
根がこうだから、紫さまには宮仕えの礼儀作法は疲れるらしい。
「ですが…」
先ほど仰ったとおり、紫さまは藤原北家の御息女。歳は近いが身分は私より上だ。
「ですがも春日もねえってんだ。紫って呼ばねえと返事しねえからな!」
「紫…さん」
黙って私を睨む紫さん。
「…そ、そういえば今更ですけど何故“紫”ですか?」
紫というのは彼女の本名ではない。
「香子なんて漬物みてえじゃねえか。もうちょっと粋な名を名乗ってみたくてよ」
香子さんも素敵な名前だと思うけど…
紫さんは些か飽きっぽい性分なのか、あだ名も桃やら藤やらころころ変わる。今は紫というのがお気に入りらしい。
「ときに江本よ」
「毒舌解説者みたいに呼ばないでください」
「大江御許丸(おおえのおもとまる)だから江許(えもと)」
※後の和泉式部
「自分だけ粋なあだ名つけてずるいですよ」
「じゃあ、許子(もとこ)」
「まあ…それならいいです」
私の父から紫さんの父君へ、越前国の受領を引き継いだ縁もあり、私たちは幼少より親しい仲。
「…で、件の定子ってのはどんな娘なんだい?」
「さあ…美しく聡明な方との噂ですけど、お会いしたことはないし」
「お前さんも言うねえ。この目で見るまで嘘か真かわからねえってわけだ」
「別に、そんなつもりじゃ…」
評判を疑うわけではないけれど、会ってみたいとは思う。

(つづく)