トラえもん!? -11ページ目

トラえもん!?

十代前半の和泉式部、定子、紫式部の三人に二十代の清少納言を加えた四人が中心の百合的日常。史実とは異なりますが、平安時代の女の子たちなので頻繁に和歌を詠みます。
『マーシュの魔術労働』はオリジナルの魔法学園もの

※昨日の続き

~永祚元年正月朔日~
「そろそろお暇致しますわ。また今度ゆっくりお話してくださいまし」
明日のためにちょっと準備をしておきたくて、早めに帰ることにした。
「今度っていつ…おーい」
肩すかしを食らった気分だと少し残念そうに私を見送り、紫さんは一句詠んだという。
“めぐりあひて 見しやそれとも わかぬまに 雲がくれにし 夜半の月かな”
※久方ぶりに会えたってえのに、(雲に隠れた月みてえに)さっさと帰っちまいやがって。おめぇさんも存外つめてえなあ…といった意味

やんごとなき家柄のお正月は、多くの人が集まり盛大な宴が催される。我が主、昌子(太皇太后宮)さまの御所にも日頃は見ない方々もいらっしゃり賑わっているが、私は昌子さまにお許しをいただいて抜け出し、別の場所へ向かった。
「おはようございます」
定子の女房※だろうか? 行く手に現れた大人の女性が私に声をかけた。
「定子さまに御用ですか。どちら様?」
※妻ではなくメイドのような役割の女性使用人のこと
「昌子太皇太后宮にお仕えしています大江許子と申します。謹んで初春の御慶びを…」
とりあえず新年の挨拶を述べるが、
「初春と云っても、師走の晦日とそう変わりませんわ」
一蹴されてしまった。
「確かに…そうですね」
大晦日から一夜明けた途端に人々は何もかも新しくなったようなつもりで浮かれているけれど、御所を一歩出れば風の冷たさも小鳥の声も、山野の草木も冬のそれと変わらない。
「しかしながら…もし定子さまにお目通りがかなうならば、やはり私にとっては祝うべき特別な日になりましょう」
そう言い返すと、女性は少し意外そうな顔をしたあと、くすっと笑う。
「わたくしは清原諾子(なぎこ)。定子さまの御身内ではありませんが…伝えて参りますわ」
※後の清少納言。定子に仕えるのは四年後のことですが、ずっと前から定子のもとへ足繁く通い口説き続けた末、女房の座を勝ち取ったとしたら萌えるのでそういうことにしておきます←
「あ、はい…よろしくお願いします。諾子さま」
女房じゃないなら何故ここにいたんだろう…この人も来客だったのか。
「“清”で結構ですわ」
ふと、幼なじみの顔を思い出す。なんだか紫さんに通ずるものを感じる人だな…歳はだいぶ上ry
「何か仰いまして?」
定子を呼びに行こうとした清原さんが振り向く。
「い、いえ…何も」
声には出していない…はずだけど、気をつけよう汗

(つづく)