「結婚するわ」
したらええがな。

「専業主婦でもなんでも、好きなことをして暮らせばイイって言ってくれた」
それは、なにより。

「アタシに贅沢させてあげれるように頑張るって」
はあ。よろしーなあ。
マミーにもそんなヒト、紹介してくれへん?

大学4年のウチのお嬢に、やっとまともな彼氏ができて、まだ一年も経ってないが、若いふたりはめっちゃラブラブである。
彼は、日本を背負って立つ、頭良すぎてちょっとおかしいんちゃう?(笑)ってアタシが普段から思う某国立大生。しかも、バリバリのスポーツマンでカッコ良くて、優しい。
ゆーことナシである。

だけど、2人とも恋愛経験がほぼないに等しく、加えて、どうも人生を、そして社会を舐めてんじゃないか??って思うこともしばしば。

ふ〜たりぃのため〜、せ〜かいはあるのぉ♪
(古いな^^;)

まさしく、この「ふたりきりの世界」にいることは、間違いない。
だけどさ、そりゃ彼が研究者にでもなれば、それなりに美味しい人生が待ってるのかもしれないけど、そもそも論として、「ふたりの関係」も「就職」も何もかも、保証なんてどこにもありゃしないということをわかっとるのか?
もちろんそれでも、楽しい毎日を過ごしてくれるなら、それに越したことはないんだけどさ。

で、数日前「彼氏の引退試合にサプライズで登場したいんだけど、とっても遠い場所で開催されるので、ついて来てはくれまいか」とお嬢から頼まれた。
「ついて来て」ではなく、「車で送って」が正確である。

その日は別に予定なかったし、「いいよぉ。」と言ったものの、車で片道3時間弱。
いやーん。遠いがなーえーん

たどり着いたのは正午過ぎ。
地元の名物料理をお昼に食べて、いざ、観戦に。

ベンチで日焼けしないように、ほっかむりしてジトッと座るオバはんと目をキラキラさせながら試合を見ているお嬢。

しばらく試合観戦していると、にわかにお嬢が小さく叫んだ。

「あ!お父さんとお母さん!!」

ひえっ。誰の?!
え?!彼のご両親?!
まじっ?!ガーン
アタシ、すごい格好してるよっ?!
挨拶なんて出来ないわっ!
だけど、彼のご両親には、お嬢がご飯食べに連れて行ってもらってたよね?!
やっぱ、ちゃんと挨拶しなきゃね!

しかし、お嬢は、激しく躊躇した。
まさしく狼狽えている。

挨拶せなあかんわ。

「でも、こちらの存在に気づいてる様子はないのっっ!」

いや、だけど、ちゃんとこちらから「こんにちは」って言わないと!

正直言うと、アタシにも躊躇はあった。
あちらのご両親は、スッキリと爽やかにスポーツ観戦。
アタシはといえば、死ぬほど汚いジーンズと泥が跳ね上がったドロドロのコンバースに、バサバサの髪にサングラスしてほっかむりである。

そして、変に気後れしたアタシは、狼狽えるお嬢と共に、「挨拶のタイミングの自然な到来」に甘んじて身を任せたのである。

試合も終わり、そろそろベンチから立とうかと言う頃、アタシの真横を男性が通り、微かに会釈をされた。

キョトンとしたまま、中途半端な会釈とゆーか、アイコンタクトを返したが、その男性が過ぎ去ったあと、またもやお嬢が、

「お父さんかも…」

おーいっっ!
ちょっと待って!
「かも」じゃないやろっ?!
キミ、それ、「お父さんやわ」やろ?!

ほっかむりのまま、変なアイコンタクトを取ったアタシは、あまりにも無防備で無神経なオバハンやんっ!

娘を責めながらも、実際、逃げていたアタシも否めない。
なんだか、タイミングを逸したと言うより、知らん顔を最後まで突き通したようで、とてもバツが悪かったが、はたと気づいた時には、彼のご両親は爽やかに去り、石のように固まった私たち母娘は、その後ろ姿だけを見送るしかなかった。

そして、ゴールデンウイークもあと2日で終わる土曜日。
お嬢と彼氏が夕飯を食べに我が家に来た。

「アタシたち、本当に失礼なことしちゃってね。非常識だと思われてるんじゃないかなあ」
となんとかかんとか、彼氏に言い訳がましいことを言おうとすると、

「あ。ウチの両親が「○○ちゃん(お嬢)のお母さん、とても感じのイイ人だね」って言ってました」

ろくに挨拶もせず、隠れ続けたドロドロのほっかむりのおばちゃんに対して?!

やっぱり、出来た人たちの遺伝子は、脈々と出来る人種を作り上げて行くのだ。

やっぱり、キッチリ見つかっていた。
ひー。
親子揃って、恥ずかしー滝汗
社会を舐めてるのは、アタシもでしたぁ笑い泣き