『きよしこ』 重松 清 新潮社
(今回は非常に長くなると思います・・・)
この歳になってとってもいい本に出合えたと思います。まだまだ出会うべき本がたくさんあるんだろうな。
それを勧められるかが、司書の仕事だろうなと、改めて感じました。
重松清さんの『きよしこ』を読みました。
重松さんといえば、読んだことはなくても名前くらいは聞いたことがあるという、数々の賞を受賞している人気作家さんですよね。
私も今まで読んだことはなかったけど、6年生の国語の教科書におすすめの本として出ていたりしていたので、ずっと気になっていた作家さんでした。
今、重松さん原作の『流星ワゴン』がドラマになっていますね。そちらも見ていますが、「流星ワゴンはなくても、ほかの何か借りてみようかな~。」と軽い気持ちで図書館で借りてきたのが『きよしこ』でした。
この『きよしこ』は、重松さんいわく「個人的なお話」です。司書なのに恥ずかしながら、私は重松さんが吃音に悩まされていることを知りませんでした。この『きよしこ』は、そんな吃音に悩む少年(つまり重松さんの子供時代)のお話です。
きっかけは、重松さんをテレビでみた吃音の息子を持つお母さんから手紙が来たことでした。お母さんは息子と同じ悩みを持つ重松さんに「吃音なんかに負けるな、と励ましてやってほしい」と返事を頂けないかというものでした。
しかし、重松さんは返事を出しませんでした。その代わりに『きよしこ』を書きました。
重松さんは、「ぼくの書くお話は、現実を生きるひとの励ましや支えになどならないだろう、と思っている。ましてや、慰めや癒しになど。ぼくはそこまで現実をなめてはいないし、お話にそんな重荷を背負わせるつもりもない。お話にできるのは『ただ、そばにいる』ということだけだ、とぼくは思う。」とまえがきで言っています。
重松さんの言いたいことがちょっとわかる気がします。読む人を感動させよう、泣かせようと意図して作ったお話はとても胡散臭く感じるものです。そんな邪念ではなく、本当に作家が伝えたいこと、感動したことだけが、読み手にも伝わって感動を与えるのだと私は思います。
小学校図書館に村上龍さんが書いた『13歳のハローワーク』という本があります。これは小6から中1くらいの子供たちに「将来自分はどんな職業をしたいのか?」を探すヒントになる職業内容の案内本です。
でも、職業紹介の辞典にありがちな当たり前の紹介ではなく、そこは村上流の視点で書かれています。
作家・・・13歳から「作家になりたいんですが」と相談を受けたら、「作家は人に残された最後の職業で、本当になろうと思えばいつでもなれるので、とりあえず今はほかのことに目を向けたほうがいいですよ」とアドバイスすべきだろう。医師から作家になった人、教師から作家になった人、(中略)元犯罪者で服役の後で作家になった人、ギャンブラーから作家になった人、風俗嬢から作家になった人など、「作家への道」は作家の数だけバラエティーがあるが、(中略)その逆はほとんどない。(中略)それは、作家が「一度なったらやめられないおいしい仕事」だからではなく、ほかに転身できない「最後の仕事」だからだ。(中略)
作家の条件とはただ一つ、社会に対し、あるいは特定の誰かに対し、伝える必要と価値のある情報を持っているかどうかだ。
『13歳のハローワーク』村上 龍 より
村上さんのおっしゃる通り、重松さんは吃音という悩みを持つ少年に自分の少年時代の情報を伝える必要があり、そして寄り添いたいと思ったということでしょう。売れっ子作家というものがあるとしたらそれは、「売れる本を書いた」のではなく、「その作家がみんなにとって価値がある情報をたくさん持っている。」ということなのでしょうね。
『きよしこ』の内容は、読んでいただきたいので詳しくは書きませんが、言いたいことがあるのに言えないということがどんなにつらいことなのか、特に子供時代。友達に笑われる。先生や親に叱られる。それでも言えない。こんなに辛くて苦しいことがどうしても変えられないなんて。
心の中できよしことはなすとき、紙に書くとき、少年はつっかえずにすらすら話せる。
重松さんは、作家になるべくしてなった人なんだと改めて思いました。
小学校1年生から高校卒業までの間の出来事が7つのお話になっています。
すべていいのですが、私のお気に入りは「乗り換え案内」と「ゲルマ」です。
大変長くなりました!ありがとうございました。





