数あるピアノ協奏曲の中でも、ショパンのピアノ協奏曲第1番と第2番は、よく知られていて、耳にする機会も多い作品です。
わたしも以前から何度となく聴いてきましたが、いつの頃からか、とてもフレンドリーな音楽に聴こえるようになりました。
ショパンというと、悲しみや恋愛の音楽と説明されることが多いように思います。
実際、第2番は若きショパンの恋心とも深く結びついています。
けれど、そこにあるのは、恋愛中の激しい情熱や苦悩をそのまま描いた音楽ではありません。
恋をしていることで、いつもの世界まで少し違って見えるような、そんな心の変化が音になっています。
ショパンの音楽では、人間の感情がそのまま生々しく表現されるのではなく、光や空気に変わっていくように聴こえます。
強い感情を扱っているのに、どこか現実の手触りから離れているのです。
わたしは、そうしたショパン特有の浮遊感に惹かれています。
第1番を聴いていると、未知の世界から誰かが手を差し伸べてくれているように聴こえることがあります。
この曲が書かれたのは、ショパンがワルシャワを離れ、新しい世界へ向かおうとしていた時期です。
ピアノが入った瞬間、音楽がこちらに向かって大きく開いていきます。
そのまま自然に、その世界へ誘われていくのです。
一方、第2番には、もう少し内側へ向かう表情があります。
恋や憧れから生まれた音楽ですが、演奏者によっては、その若さよりも、ずっと成熟した人間味が前面に出てくることがあります。
若いショパンが感じたものを、長い時間を生きた人間が、後から静かに見つめているように聴こえるのです。
そうなると、時間を重ねたからこそ分かる感情まで、旋律の中に重なってくるのです。
それでも、最初に聴いたときのあの透明感は消えません。
同じ曲でも、弾く人によって人間が前に出てくるのがとても面白いです。