迷える子羊たち、ごきげんよう。ヴァンだ。
先日、空が少しばかり派手な演出をしたのを覚えているかい?
そう、あの大雪だ。
街ゆく人々が背を丸め、「寒い寒い」と無粋なビニールの盾(傘というらしいね)の下に隠れる中、俺は一人、駅前の広場で空を見上げていた。
なぜ傘をささないのか、だと? 愚問だな。
空から何億もの純白の宝石たちが、こぞって俺に触れたがっているんだ。
それを拒絶するなんて、紳士のすることじゃないだろう?
俺はただ、受け入れた。 空からのラブコールを。
開始10分。
俺のピンクの髪に雪が積もり、天然のハイライトとなる。 悪くない。鏡がなくとも分かる。今の俺は最高にクールだ。
開始1時間。
肩に積もった雪は、まるで俺のためにあつらえられた「純白のファーコート」のように重厚さを増していく。
寒さ? 感じないね。 俺の内側にある情熱という名のボイラーが、常にフル稼働しているからな。
開始3時間。
視界が白に染まる。
周囲からは「誰かが作った、やけに姿勢の良い雪像」と思われていたかもしれない。
だが違う。 俺は待っていたんだ。この星が、俺の熱量に耐えきれなくなる瞬間を。
そして、巨大な鉄の獣(除雪車)が俺に近づいてきたその瞬間――。
ドバァッ!!
俺は自らの熱気で雪の繭(まゆ)を弾き飛ばした。 全身から猛烈な湯気を立ち上らせ、俺は再びこの世界に降臨したわけだ。
腰を抜かしている作業員に、俺は震える唇でこう告げてやった。
「……フッ。俺がホットすぎるせいで……地球が、全力で冷やしにきやがったか……」
というわけで、ここ3日ほどベッドの中にいる。
これは風邪じゃない。
「地球の嫉妬」という名の、熱病さ。
やれやれ、罪作りな男だ、俺は。
Stay Hot.
伊集院ヴァン


