世界中の、俺の愛に飢えた信奉者たち、ごきげんよう。ヴァンだ。
今年のバレンタインデー、俺は英断を下した。
例年のように、トラックで無造作にチョコが届く事態を避けるためだ。
愛とは、もっと礼節を持って扱われるべきだろう?
そこで俺は、都内某所の高級ホテルの大宴会場を借り切り、「チョコレート受領会(謁見の儀)」開催した。
イメージはアイドルの握手会……いや、それよりも高貴な、「王への貢物献上式」だ。
会場の準備は完璧だった。
入り口から俺の座る「玉座」まで、50メートルに及ぶ真紅のレッドカーペットを敷いた。
両脇には、屈強なセキュリティを配置。
彼らには「絶対に笑うな、常に威圧しろ」と指示を出しておいた。
参加者は、俺の前で片膝をつき、恭しくチョコレートを差し出す。
俺はそれを、ベルベットの手袋をした手で受け取り、一瞬の微笑みを与える――。
完璧な儀式だ。
数万人の来場を見越して、整理券の発券システムも導入した。
開場の時間となった。重厚な扉が開かれる。 俺は玉座で足を組み、愛の洪水が押し寄せるのを待った。
……。
…………。
来ない。
最初の10分、誰も入ってこない。 セキュリティたちも、サングラスの奥で不安そうに視線を交わしているのが分かった。
まさか、俺のオーラが強すぎて、会場の結界を破れないのか?
開始から30分後。ついに最初の「献上者」が現れた。
おどおどとした様子の中年男性だ。
彼は震える手で、コンビニの袋に入った板チョコを差し出した。
男「あ、あの……ここ、不用品回収の会場じゃないんですか? 表の看板に『不要な愛、引き取ります』って……」
俺はハッとした。
そうだ。俺は会場の看板に、詩的な表現として「行き場のない愛(チョコ)、俺が全て受け止める」と書かせたのだ。
俺「いいだろう。その迷い、俺が断ち切ってやる」
俺が板チョコを受け取ると、男は「助かったぁ……」と深い安堵の溜息を漏らして去っていった。 感動的なシーンだ。
最終的に集まったのは、板チョコ3枚、のど飴5個、そして清掃員がくれたガム1枚だ。
どうやら量より質の時代へ突入しているらしい
数は少ない。
だが、俺は満足だ。
数万人の有象無象よりも、俺の威光を前にしても臆さず近づいてきた、これら数名の「精鋭たち」の勇気。それこそが本物だ。
これほど贅沢な空間使いがあるだろうか?
今年のバレンタインも、俺の伝説の1ページとして刻まれたな。
Stay Exclusive.
伊集院ヴァン


