野鳥を保護する前に | triiiiiico!

野鳥を保護する前に

今シーズンは巣立ち雛を拾っての炎上は少ない気がします。
観測範囲では燃えていないだけでけっこう見かけますが…

一方でカラスに関しては
怪我をした巣立ちカラスや
捨て雛されたカラスは多く見かけるように思います悲しい


巣立ち雛に限っては
やはり善意で何とかしようと思ってしまっての誤認保護が目立ちます。


巣立ち雛も傷病鳥も
保護に至る人間側の理由や気持ちとしては
・無知で純粋に可哀想と思う
・母性(?)本能的に何とかしたくなる
・認識はあっても可哀想が勝ってしまう
・スルーすることへの呵責に耐えられない
・例え違法だろうと何だろうと正義感が勝つ
など色々あると思います。


逃げる雛を追って捕獲してまでの保護は
人間という存在を危険大型生物と認識していれば
その存在に捕獲されるのは恐怖でしかないですし
まだ外敵というものを認識していなくても
狭いところへ入れられ
いつもと違うものを見慣れない道具で飲食させられ

これまでの生活と違うことが突然に立て続けに起こり

とてつもないストレスになります。

逃げる様子や体力がなくても
自分より遥かに大きな生き物が近づくことも脅威となりますし
そんな大きな生き物に助けて欲しいとは思っていないだろうし
良かれと思って治療することが
精神的にも体力的にも大きな負担となり逆効果になることも。

そうした大きなストレス環境下に置かれ
誤った処置や不適切な給餌により
育ちきらずに死んでしまうことも多いです。


巣立ち雛なのに「保護してくれてありがとう」
すぐに亡くなってしまっても「最期は暖かいところで良かったね」という
美談にしてしまう周囲のコメントにもモヤッとします💧


「保護しました」でよく見かけるのは大雑把に分けて
・巣立ち雛
・落巣雛(赤裸雛とも)
・早成性雛
・負傷(傷病)鳥
の4つかなと思います。


巣立ち雛というものを知らずに
保護している様子はよく見られます。
鳥を知らない人は
巣立ちといえばもう一人立ちして
自由に飛べて一人で餌もとれて
というイメージでしょうから
地面でよちよちふるふるしている雛を見ると
保護しなければ!と思ってしまうのでしょう。

飛び方も餌のとり方もこれからの生活も
兄弟でぎゅうぎゅうの狭い巣の中で
人間のように座学で覚えることはできません。
それらをOJT方式で親に教わり覚えるために
巣から飛び出し(鳥種や場所によっては飛び落ち)て間もないのが巣立ち雛です。

巣立ち雛より週齢が小さく
本当に巣から落ちてしまっているのが落巣雛です。
落巣雛はまだ巣立ち出来る状態まで育っておらず
目が開いていなかったり
ほとんど羽根が生えていなかったり
場合によっては何の鳥かもわからないほど
見るからに未熟です。
こういう雛が落ちているのは
雛同士の生存競争に負けて落とされたもの
親に育たないと見放されたりして落とされたもの
カラスなど天敵となる鳥獣に巣から攫われ
地面に落とされたもの等があります。
落巣雛は高い所から落ちた時点で
骨折や内臓損傷や低体温になったりで
回復生存率は低いです。


鳥の雛の中には
孵化してすぐに目も開き
羽根もフサフサ生えていて
あちこち歩きまわり
自分で餌も探して食べられる種類のものもいます。
カモ類、キジ類、シギ類などがそうで
早成性の鳥の雛です。

早成性雛の誤認保護もよく見かけますが
例え親が近くにいなくても行動範囲は広く
自分で餌をとれるので
特に心配は要らず保護の必要性は極めて低いです。



4月に孵化したケリの雛
もう自分達で餌を探して食べています



もう親に近い大きさに成長

雛は3羽居たけど
1羽は側溝に落ちてしまったようで
数日は親がずっと側溝をのぞき込んで鳴いていたけど
結局2羽になってしまいました。



 


本記事は安易な保護を勧める意図ではありません


 

巣立ち雛を見つけたら

✦何もせず離れる

鳥はとても視力が良く、人間の目には見えないような所からでも親は雛を見ているので、迷子になっている確率は低いです。

親が近くにいて、人が近づくと威嚇してくるようなら尚更、何もせずに立ち去るように。


✦近くの安全な場所に移す

巣立ちした雛なので巣には戻しません。

地面にいたら、木の枝や生け垣の中など、天敵や交通事故にあわないような所へ移してやることは、誤認保護でも違法でもありません。

野鳥は様々な菌を持っていたりダニがついていることもあるので、移動させる際は極力素手でない方が良いけれど、衣服につかないよう袖まくり等して後でしっかり手洗い消毒すれば大丈夫です。(移動させる手段に関する一時的な事なので、蜜に接する場合はしっかりと、ダニ対策、感染対策や隔離対応を)

素手で触ったから人間のにおいがついて育雛放棄するということはありません。



 

落巣雛を見つけたら

✦何もしない

淘汰であり、それを必要とする生き物もいる食物連鎖であり、野生動物が生きて死ぬ意味だと受け入れる。


✦巣のある場所がわかれば戻してやる

戻せそうな高さなら戻してもいいけれど、巣から落ちてしまったのではなく落とされたのなら、戻してもまた落とされる可能性は高い。

戻せない高さなら、すぐ近くに仮巣(空き箱、カップ麺容器、100均で買えるような籐や竹の籠など)を作って雛を入れておくと親が給餌してくれる可能性がある。


✦どうしても保護したい

鳥種と食性、給餌や育雛の知識は最低限必要

生存確率は低い




 

ヒヨコのような雛を見つけたら

✦何もせず離れる

模様があったり茶色っぽかったり黒っぽかったりで、所謂ヒヨコっぽい雰囲気があり、歩いているのは早成性の雛で幼いながら自立している。


✦近くの安全な場所に移す

早成性の鳥の巣は高い所にはなく、河原や草むらや田畑などで、素だった直後からその周囲で生活しているので、巣を探して戻す必要はありません。

交通事故にあわない所、川や水路に落ちない場所等に移動してやる。





 

怪我している鳥を見つけたら

人為的な怪我でなければ、基本はそれも自然であると受け入れて手出しはしないことが推奨されます。

それでも保護するとなったら、その前に確認しなければならないことがあります。



✦怪我か脳震盪か衰弱か

窓などにぶつかっての脳震盪であれば数分〜1日くらいで飛び立てるので、一時的に安全なところに移動する程度で、連れ帰ってまで保護する必要はありません。

衰弱の場合は、今は鳥インフルもシーズンが長くなり、カラス(特にブト)にも多くなっているので、迂闊に触らない方が良いです。

鳥インフルのような衰弱症状が見られる場合は、亡くなって他の生き物が口にするのも良くないでしょうから、早めに保健所へ連絡が良いでしょう。


✦怪我をした巣立ち雛

親が近くにいて、人が近づくと威嚇してくるようなら尚更、怪我をしていて先が長くなさそうであっても、介入すれば助かる命だったとしても、親の目の前で誘拐という残酷なことはする必要がないと思います。


✦狩猟鳥獣か非狩猟鳥獣か

それにより対応も変わってくるので、それぞれについての法律上の扱いなどを確認する。

鳥種と食性くらいは保護するなら最低限必要。


✦居住地の行政では、野鳥の保護に対してどういう対応を行っているかや関係連絡先はどこか

一切の保護は厳禁というところもあれば、口頭での許可申請を承諾してくれるところ、許可証やそれに準ずるものを発行しているところ、連絡した為に処分されるハメになるところ、本当に行政によってまちまちです。


✦指定病院、救護獣医師、救護施設や鳥獣保護センターはあるか

鳥は専門病院があるほど、普通の動物病院ではなかなか正しく診てもらえない生き物です。

野鳥は普通の動物病院でも診ることが難しいですし、鳥専門病院では逆に、ペットである患鳥達を感染症から守る為に、野鳥の診療は受け付けていないことがほとんどです。

医療的処置や救護が必要な傷病鳥を保護したとして、どうするのか考えなくてはなりません。

自分で継続的な保護飼養ができない場合や、非狩猟鳥獣の場合に施設や保護センターへ託すこともありますが、施設やセンターで受け入れ不可な鳥種の場合は、自分で病院を探して自宅で飼養することになります。


✦保護後の生活はどうするのか

傷病保護鳥は快癒してリリースできることもあれば、ハンデ持ちとなって長く飼養することになる場合も。

住宅条件はどうか、隔離スペースや飼養スペースはあるか、同居家族や同居ペットのこと、長期的な治療や処置や費用、長期的な飼養は可能なのか、先々の事も手を出す前に考えなければなりません。

保護はして欲しいけど、その後の世話も何も出来ない丸投げでは話になりません。





 




迷子のペット鳥の目撃情報にも
「どうして保護してくれなかったんだ!」といったコメントがつくことがよくあります。
鳥に詳しくはない善意の目撃情報に
そういった無茶振りや強要は良くないという声も多いです。

雛、弱った鳥、怪我をした鳥の目撃情報にも
そういった類のコメントがつくことがあります。
野鳥を保護してはいけないと思っている
可哀想だけど保護はできないと思っている
保護しても困ると思っている
だけど目撃情報はアップした人に対して
保護できませんか?や
保護している人はたくさんいるとやんわり強要したり
個人情報なので場所は伏せたい人に執拗に聞こうとしたり
1羽でも多く保護したい気持ちからなのだろうけど
どうするのかは
出会ってしまった人が決めることかなと思います。