突然だが、私には好きな人が居る。
その人は同じ学校で、1年先輩である。
名は長瀬…という。
何故、苗字だけなのかと言うと、
周りが“長瀬”としか呼んでいないからだ。
先輩の学年に『長瀬』という人は3人居るらしいが、
苗字で呼ばれてるのは先輩だけ。
残りの2人は下の名前で呼ばれている。
でも、私は見てしまった。
1人だけ、先輩の事を下の名前で呼んでいる人が居る事を…。
あれは学校が休みの日。
図書館で勉強した帰りだった。
図書館で借りた本を幼馴染みの家に持って行く途中。
公園のベンチに座ってる先輩の見たのだ。
声を掛けようとして、止めた。
逆の方向から先輩に向かって手を振って走って来た人が居たから。
“智慧(チエ)!!”
その人はそう呼んでいた。
先輩は大声で呼ぶな!と真っ赤になって怒っていた。
暫くボーっとしていたが、ハッと気付いて私は、その場を離れた。
長瀬智慧・・・コレが先輩の本名みたいだ。
下の名前で呼ばない理由は、女の子みたいだから…らしい。
では、何故、公園で見た人は下の名で呼んでいたのか…。
私は気になって長瀬先輩と同じクラスの深幸先輩♂に聞いてみた。
“…アイツは同じ学校じゃ無いから”
どうやら公園で見た男の人は同じ学校では無いようだ。
長瀬先輩との関係性も聞いてみたが、深幸先輩は知らなかった。
それから暫くして私はあの公園に行ってみた。
長瀬先輩が居るかも~と思って行った訳では無い。
…まぁ、会えれば良いかなとは思ったけど(笑)
30分程、ベンチでボーっとしてたら、横に誰かが座った。
誰かに電話をしているようだ。
?:公園着いたよ~。今、何処~?
アレ? この声って…。
チラッと横を見ると、横に居たのはあの時、公園で見た男だった。
じゃあ、電話の相手は長瀬先輩?
?:え~!? 此処で!? ココ公園だって言ったじゃん。…恥ずかしいっつーの!///
一体、何を言わされようとしてるんだ?
まさか、『好きだよ』とか『愛してるよ』とか言わせる気?
だったら相手は長瀬先輩じゃ無いか(笑)
?:はぁ!? 浮気なんてしてねーよ! それは男だってーの! マジだって! 今日会わせるから!!
やっぱり電話の相手は彼女のようだ。
それから30分して電話の相手が来たみたいだ。
意外と大人しそうな人だった。
何かイメージと違う(笑)
もっと派手なのを想像していた…。
その10分後、公園に来たのは何と長瀬先輩だった。
長瀬先輩はその2人を見て悲しそうな顔をした。
?:コイツが智慧。幼馴染みなんだよ。コイツの学校では長瀬って言われてるんだよな?
智:…うん
?:初めまして。誠也の彼女の美岬(ミサキ)です。…カタカナでチエってあったので、女性だと…
智:…俺も以前に、止めたら?って言ってたんですけど…
?:次からは漢字で入れるから! 何だったらその後に男って入力するから!
美:それは逆に嘘くさいから止めて。まぁ、会えたから良いわ。じゃ、行きましょう
誠:おう! じゃーな! 智慧!
智:…うん
そこで私は気が付いた。
長瀬先輩が誠也先輩に何を思っているのかを。
どうして誠也先輩と美岬サンを見て悲しそうな顔をしたのかを…。
私はそっとその場を離れた。
次の日、長瀬先輩は特に普通だった。
私は長瀬先輩を知っているだけで、
私と先輩は友人ではない。
そもそも学年も違うし…。
昨日どうなったんですか?とは聞けない(笑)
まぁ、1つだけハッキリした事はある。
私の好きな人、長瀬先輩には、
好きな人が居た…という事だ。