オールドメディアとネット系企業の関係性と世論の形成のされ方について
ということで、いやいやいや、いつものことであるが、何だこの報道の仕方はと、呆れるというか、腹立たしいというか、こんなんでこの国は大丈夫かと不安になるなど色々なマイナスの気持ちに苛まれるが、ともかくも以下のヤフー記事(TBS NEWS)を読んでいただきたい。そしてついでに、その報道について書かれているコメントについても主だったものをざっと目を通していただきたい。
https://news.yahoo.co.jp/articles/b0742b7e5cdb1531ed570f4ab9a0ec780a806a96
さて、どのような印象を持たれたであろうか。アメリカのウォルツ国連大使が22日、CBSテレビの番組で「日本の総理が海上自衛隊による支援を約束したばかりだ」と話したことに対して、木原官房長官は23日、「日本として何か具体的な約束をしたとの事実はありません」と否定したという内容だ。これだけを読めば、アメリカと日本で、日米首脳会談の場での話し合いの結果について齟齬、対立が生じているような、何かしら不穏な雰囲気を感じられるであろうと思われる。ウォルツ国連大使が、高市総理の発言について曲解したり、誇張して言っているようにも受け取れる。そしてコメントの内容についても、そういう印象に沿ったものの意見が多く見られる。
では実際にはどうであったかと言えば、以下の動画を見て頂きたい。テレ東配信の3月23日午前、木原官房長官定例会見14分23秒ノーカット動画である。じっくりと見て欲しい。
https://www.youtube.com/watch?v=QZht0e3IufY
5分20秒辺りで産経新聞の記者が、茂木外相のTV番組での発言として、日本の機雷掃海の技術は世界最高であることから、停戦状態となり機雷が障害だという場合には、ホルムズ海峡への機雷掃海部隊の派遣を考えることになると言及したが、政府としても同様の考えなのか認識についてお伺いしますとの質問に対して、木原官房長官は現時点において特定の取り組みが念頭に置かれている訳ではなく、また何ら決まった取り組みというものはありませんが、日本としては関係国と意思疎通をしながら現下の情勢をよく踏まえつつ必要な対応を検討してまりますと回答している。
次に8分40秒辺りから、日本テレビの社員が日米首脳会談の直前に発表された共同声明に関して、日本としてはどのような取り組みを具体化してホルムズ海峡の航行の安全確保を図っていくかについて質問している。それに対して、木原官房長官は、我が国は、米国が建設的な役割を国際的な連携の下で発揮するよう引き続き後押ししてゆくという観点から、今回、共同声明に参加することにしたものであります。ホルムズ海峡における航行の安全の確保を含む中東地域の平和と安定の維持というのはエネルギーの安定供給を含め、日本を含む国際社会にとってきわめて重要であると申し上げています。現時点において特定の取り組みというものが念頭に置かれているわけではありませんが、日本としてはこの声明も踏まえホルムズ海峡における航行の安全の確保に向け関係国や国際機関を含めた国際社会と緊密に連携しながら必要なあらゆる外交努力を引き続き行ってまります、と答えている。
そして11分ごろから,問題のTBSテレビが、自衛隊の支援ということで、同じようなことを聞いている。アメリカのウォルツ国連大使はアメリカのTV番組で高市総理が航行の安全確保への支援として自衛隊の支援を約束したと発言しました。高市総理は日米首脳会談後のぶら下がりで、日本の法律の範囲内で出来ることと出来ないことについて詳細にきっちりと説明したと述べておりますが会談内で支援を約束したのか先ず事実関係をお伺いします。また法律の範囲内で出来る支援として想定されているものがあれば教えてくださいと聞いている。それに対して木原官房長官は、日本として何か具体的な約束をしたとの事実はありません。その上で申し上げれば、今般の日米首脳会談においてはトランプ大統領からホルムズ海峡の安全確保は非常に重要であるとして、ホルムズ海峡における航行の安全に関し、日本を始めとする各国に対し貢献の要請がございました。これに対して高市総理からは、ホルムズ海峡における航行の安全の確保はエネルギーの安定供給に関する観点からも重要であるとの認識を示したうえで、我が国の法律の範囲内で出来ることと出来ないことがある旨を伝えこれについて詳細に説明をいたしました。
以上である。さあ、どうであろうか。各質問者はそれぞれのメディアを代表して、切り口を変えて聞いているが結局、同じことを聞いているのである。それに対して木原官房長官は、繰り返し丁寧に同じことを述べている。現時点で具体的な支援、取り組みというものはまだ決まっていないが、関係国と連携して、法律の範囲内で出来ることはするつもりであると。要するに何らかの形での支援をすることに関しては、決して否定的、後ろ向きではなく、むしろ能動的な姿勢を示していると言えるであろう。だからアメリカのウォルツ国連大使の発言は決して曲解でも誇張でもないし、日米で齟齬や対立がある訳でもないということである。現時点で支援の内容が具体的に決まっているかどうかは枝葉末節ではないのか。TBSは何でこのような報道の仕方をするのであろうか。典型的に悪質な印象操作ではないか。オールドメディアはこういうことを日常的に何万回、何十万回と繰り返して世論を意図的に作っていくのである。ここにおいて現代社会における情報リテラシーの問題として、オールドメディアとヤフーなどのネット系企業の関係性や世論の形成のされ方について考察すべきであると思われる。たとえば、今回の例で言えば、ヤフーニュースに掲載されたTBSの記事は広告ではなく、著作権が発生しているので、ヤフーがTBSから一次情報を仕入れているということで、恐らくはヤフーがTBSに料金を支払っているのであろうと思われる。よって言うまでもないことだが、ネット系企業とオールドメディアは、対立しているのではなくてビジネスパートナーなのである。それではその関係性がどのように世論の構築につながっていくかということであるが、先ずヤフーなどのネット系企業は基本的には政治的に右、左の思想傾向があるかと言えば、全くないということもないのであろうが、TBSなどのオールドメディアに比べればほぼないに等しいものであると言えよう。ないからこそオールドメディアとのビジネスパートナー関係が成り立つということである。それは必ずしも良いことではなくて、言い換えれば情報の思想性というものを日本ではオールドメディアが独占しているということなのである。たとえば今回の例で言えば、もちろん私の推測なので実際にどうかはわからないが、ヤフーはオールドメディアから仕入れた一次情報の編集には全く関与していないと思われる。見出しはどうであるとか、記事の内容をどうするかと言ったことは、一日に大量の記事を掲載しているヤフーのスタッフが、一々思慮して、決定するようなことはしていないであろうし、する意味がない。恐らくは文字数や画像の制限などを仕入れ元に伝えて記事を作成させ、それを右から左へと公開しているだけである。今の時代は、TVも見なければ新聞も読まない人間が増えているので、オールドメディアにとっては自社に都合の良い印象操作を最も効果的に広める道具が実はネット記事であるということなのだ。これは別にネット系企業を批判している訳ではなくて事実としてそうであろうということである。それでその構造をより強固にさせる仕組みとして、たとえばヤフー記事であれば、そのコメント欄の上位に「エキスパート」の称号がある識者というか専門家の意見が先ず出てくる。恐らくそのエキスパートはヤフーから依頼されて専門家としてのコメントを提供している立場なので、ヤフーからその代価としての料金を受け取っていると思われる。それはまあ当然のことであるが、問題は恐らくはそのエキスパートたちはヤフーから提示された文面の情報を見ただけでコメントを作成していて、その元情報を調べるようなことまではしていないであろうと想像されるということである。今回の例で言えば、木原官房長官の定例会見の動画である。そんなものは検索すれば瞬時に出てくるのでその気になればいつでも簡単に見れるものだが、まあこう言っては何だが、世論の形成のされ方という意味合いで述べていることなので敢えて言うが、そこまで面倒くさいことをするほどの料金をもらっていないからであろうということだ。どういう契約内容かもちろん部外者の私などには全くわからないが、恐らく一つのコメントに対して10万円ももらっていないのではないかと想像される。数万円程度の端金で15分弱の元動画をじっくりと見てからコメントを作り、投稿などしていられないという気持ちもわからないではないし、批判するつもりも毛頭ない。忙しいのにネット記事のコメント程度にそこまでしていられないであろう。しかし問題はそれで確かに日本の世論がある程度は形成されるということなのである。今回の記事に対するコメントを見ていても少なくとも私にはどこかピントがずれているような気がしてならない。元情報の動画を見ていないからである。TBSが作成、出稿した記事がヤフーに掲載され、そしてエキスパートのコメントから一般の大衆へと政治的な印象操作が上から下へと伝播、拡散するシステムが確立されているのである。そういうことをよく弁えた上でネット情報に接するのか、全く無防備に見て何らかの印象を持ってしまうかで、情報リテラシーの質という観点から見れば雲泥の差があると言えるのではないであろうか。まあ、でも私もそうであるが誰しも忙しいのである。そんなことまでやってられないのだ。そうして一人一人の面倒くささの連鎖と蓄積の中で世論が形成され、日本という国家は一部の者の利益のために永久に操作され続けるのである。
(吉川 玲)