山見博康の「社長が広報を兼ねる」…………デュッセルドルフでの思い出

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■欧州企業のブランド化

私は1994年から4年近く神戸製鋼のデユッセルドルフ事務所に所長として駐在していた間、欧州全域にわたり鉄鋼、アルミや機械関係などいろいろな顧客を訪問した。 
その時、欧州には独創的製品をもつ片田舎の小さな企業が世界を席巻しているケースが多く、その名前がブランド化しているのに深く感銘を受けたものだ。

例えば、レース編機メーカーの中でも、レースの裾の最も難しい部分の織りでは世界の大半のシェアを持っている小さな会社があったが、そのような独特の製品のみで生きている会社である。

どんなに小さい部品一個でもある製品に不可欠なものにまで高まれば、その価値は完成品と同等かそれ以上に客観的に評価され、ブランドとなっていくので一つの大きな生きる道となる。 

■ギャルピッタン社のケース 

スエーデンの首都ストックホルムから北西に向かって1時間ほどプロペラ機で揺られた港町に「ギャルピッタン」という社員4百人に満たない中堅会社がある。 

創業百年を誇る同社は、主に神戸製鋼から超高級線材(ワイヤー)を購入し、特殊熱処理し自動車エンジンバネ用ワイヤーに加工している。 

このワイヤーがバネメーカーを経由して欧州初め世界の主要自動車メーカーに供給されるのである。驚くのは何とその世界シェアは6割(当時)という。 

欧州の自動車メーカーといえば、ドイツではベンツ、BMW、ポルシェ、アウディ、フォルクスワーゲンと並び、フランスはプジョー、ルノー、イタリアはフィアット、フェラーリ、ランボルギーニ・・・・と世界的に著名ブランドの メーカーが多い。 
それらのブランドといえどもこのバネなしには生きていけないのである。一世紀もの長きにわたってどこの系列に入らず、孤高を保ち続ける小さな優良企業で、何度か訪問している内に、社長をはじめ、誇りと自信をもって働いている姿には尊敬の念さえ抱くものであった。 

このように、欧州には「ブランド化」した地方の優良企業が誇りをもって世界に君臨している会社が多いのである。小なりといえども強である。日本の中小企業ももともとそうである。ものづくり大国である日本の中小企業も、そのような姿を改めて見習うべきであろう。 

なお、神戸製鋼のこのエンジンバネ用高級線材も実は世界の5割以上のシェアを誇る「ブランド」である。1995年1月の阪神大震災では、この線材を生産する神戸製鉄所が大被害を受け、当時デュッセルドルフに駐在していた私は、ベンツやBMWからの納期の問合せなどに対応したことは記憶に新しい思い出となっている。 

【ご参考】12月セミナー講師をやります。 
●12月4日(木)&5日(金)
(財)しずおか産業創造機構セミナー 
テーマ「静岡・浜松における企業のブランド化」 
http://www.ric-shizuoka.or.jp/mt/

●12月10日(水)19:00-22:00(東京銀座) 
企画パーティ「広報を知らねば企業は滅びる」その本質と実践法を伝授する
http://www.kikaku-party.net/

●12月13日(土)
10:00-18:00
(六本木ヒルズ) アカデミーヒルズ
「1日で学ぶPR入門・演習講座」 
~PRの基礎知識とプレスリリース作成・発信のスキルを身につける~ 
http://www.academyhills.com/school/index.html#anc0812