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|02│山見博康の「社長が広報を兼ねる」………鋼材専門の宅急便
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■「メタル便」のブランド化のケース(1/2) 
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総合トラック(株)(東京、梶大吉社長)は、大企業でさえまだ「キャッシュフロー計算書」を導入する企業が少なかった99年に、いち早く経営の指標に取り入れるなど、新進の気概溢れる会社
だ。

そのことが注目され同社は日経産業新聞に大きくとりあげられた。それ以来、筆者のコンサルティングによって広報に目覚め、積極的活動の結果、業界でも知られる企業になっている。 
同社は2000年8月から千葉県の浦安鉄鋼団地(鉄鋼問屋など200社あり)において鋼材小口配送サービス・メタル便(鋼材の宅急便)を開始した。

同年12月初め同社長より「本格的に取組む為に12月20日に(株)メタル便を設立するが、いい広報ができないか?」との相談があった。 

その特徴とは 
・業界初のサービスで多くのお客様の悩みを解決すること 
・ネーミングが面白くブランド化しそうな こと 
・「鋼材の宅急便」というコンセプトが時流に乗っていること

なかなか面白い話題性あるニュースである。この場合、1社に取材要請するよ
りも広く知ってもらうために、一般紙、業界紙専門紙記者クラブに対する一斉発表をアドバイスした。 
うまくいけばメディアでも認知され、また鉄鋼業界内でもブランド化するからだ。発表日時は、12月25日(月)とし一般紙及び業界紙の記者クラブである重工業研究会及び鉄鋼研究会の幹事社に早速電話申込み、「レクチャー付き発表」でOKと
なっ
た。 
この日を選んだのは、年末の記事の比較的少ない平日なので相対的に大きく取り上げられる可能性があるからだ。 

発表テーマは「日本で初めて」を強調して「日本で初めての鋼材小口配送サービス(株)メタル便設立」とし、早速プレスレリース作成に取り掛かった。 

発表当日、同社長は初めてながらいろいろな質問にも過不足なく回答、無事発表を終えた。その結果一般紙3紙、業界紙5紙に予想以上に大きく掲載され、翌朝の反応もかなりあり大成功。その後も積極的な広報活動を続け、各紙に多くの追加記事が取り上げられた。 


■翌年、記者招待現地視察会も(2/2) 
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2001年7月初旬「小口配送サービス開始一周年記念として1ヵ月間の20%割引サービス、関西の物流会社と提携して業務拡大を図る」方針だが何か良い知恵はないかと、また相談があった。 

そこで、私は「関西へのビジネス拡大のために業務提携し、加えて一周年記念サービス」として、再度同じ記者クラブに一斉発表することを提案した。 

発表日は、8月8日(水)として両記者クラブ幹事にレクチャー付き発表で電話申込み、鉄鋼研究会10時半、重工業記者クラブ13時半となった。 

夏枯れのニュースの少ない時期なので発表すれば比較的大きく取り上げられる可能性があるのだ。早速、プレスレリースを推敲作成した。 

そして、当日。経験も豊富になり説明も質疑応答もポイントを得て実に堂々としたもので、翌日には 7紙に掲載され、顔写真付きの記事もあった。 

その後30件以上の電話問い合わせがあり大きな反響があった。更に、9月4日(火)には、鉄のみならずアルミなどの軽金属記者クラブ他を対象に「記者招待現地視察会」としてイベントを実施、参加メディアそれぞれで新たなニュースとなった。 

その結果いろいろなメディアでの大小50以上の報道になって顧客も拡大、 
「メタル便」=梶大吉との強いイメージが鉄鋼業界の多くの人達に焼き付き、
「ブランド化」してき。 

梶社長は「最近、知名度が上がったのか自分が知らない人でも相手が自分を知ってくれている人が増え有難い。自己紹介の必要がないし、信用が厚くなってきているので商談がスムーズにいくケースが多い。コストは全くかかっていないし…」と嬉しそうに語る。 

梶社長の広報実践のコメントは、 

○小さな企業でも広報のやり方次第でこんなに記事が出るのかと驚いている。
○ニュース価値があれば載せてくれ…・価値作りが大切と痛感 
○取材には最初緊張するが次第に慣れるものだ。事実を正確に伝えることも大切だがそれ以上に企業理念や社長としての想いも大いに記事に反映することを学んだ。 
○記事のお陰で業務が飛躍的に拡大している。メタル便はゼロから一年経過して120社を超える新規取引ができたが何とその70%が新聞記事がきっかけとなっている。 
○営業は記事をセールスツールに使っている。自分の口ではなく、客観性をもった記事を利用しての会社PRなので大きな信用を得ていることを実感している。 
○社長の想いや事業方針が客観的に社員に伝わり、社員の自覚も増して社内が活性化している。 
このように、日常の経営活動の中から、業界における話題性のあるニュースネタを見出し、あるいは創り出して、適切な広報のアクションをタイムリーにとることによって、少しでも大きくあるいは、ひとつでも多くのメディアに露出されることができるのである。 

【ご参考】11月以降、次のオープンセミナーで講師を務めています。広報の本質と実践を学ぶことができる講座です。新任の方でもかなり経験された方でも理解が深まることでしょう。 

■11月4日(火)-5日(水) 
東京日本経営協会「新任担当者のための広報実務入門コース」 
http://www.noma.or.jp/seminar/info/2008seminar.pdf
□11月19日(水) 
大阪府工業協会 
http://www.opmia.or.jp/seminar/

■11月25日(火) 
みずほ総研「会社を伸ばす『広報』実践セミナー」 
http://www.mizuhosemi.com/20-1287/seminar/2552

□12月4日(木)&5日(金) 
(財)しずおか産業創造機構セミナー 
「静岡・浜松における企業のブランド化」(詳細未定) 
http://www.ric-shizuoka.or.jp/mt/