■広報卓越者はマルチ役者(1/2)
広報に携わることの幸運に感謝しましょう。なぜなら、広報は「益職」だからです。他の職務では決して得られない人間的素養を磨く心身の鍛錬となり、厳しくもありますが、ハイレベルの体験を積むことができるのです。
広報に携わる人物は、第一級の人材ではありますが、謙虚になって、人間的な向上を図るよう心がけることです。多様な資質・素養が必要とするため、つねに原点に立ち返り、晴れの日も雨の日も、修行の日々と心得たいものです。すると、どこにいてもできます。
広報にはいろいろな資質が要りますが、その中でも最も大切なことは「至誠」
と「倫理感」でしょう。吉田松陰は「至誠」をもって生涯を貫き、ソクラテスも「一番大切なことは、善く生きること」と訓えています。
一方では、広報の卓越者はマルチ役者です。良い時も悪い時も会社の状況の如何にかかわらず、諸問題に立ち向かうのです。われわれはみな、大きなドラマの主人公を演じるし、また端役をも立派に務めるのです。その役者ぶりは多種多様、表裏一体となった活躍に会社の命運が託されていることを自覚していなければなりません。
【思想家】「思想家とは人類の蒙を拓きその前進を促す者」(ショウペンハウエル)です。古典を学び哲学の心を抱き自分の考え方を持ちましょう。本質を見る目、本質を見抜く感性を養うこと。そのためには、出来るだけ善いもの(音楽、絵画、書物)、真に優れたものや人に、直に接することです。
【真の雄弁家】「広報担当」といえば、弁舌さわやかな人が向いていると思いがちですが、実際には訥々でもいい、きちんと伝えることの方が大切。広報の要諦とは、伝えるべきことを、伝えるべき相手に、伝えるべき時に、的確に伝えること。「真の雄弁とは言うべきことをすべて言い、かつ言うべきことしか言わないところにある」(ラ・ロシュフコー侯爵)のです。能弁の人は言い過ぎに心し、訥弁の人は自信を持って、『真の雄弁』になることです。
【御用聞き】広報はエリートですが、実際には自ら動き、記者と同じ仕事を社内で行うことです。日々、細かいことにも地道に対応していく。こつこつと片付け労を惜しまない心がけを持つことです。「お客様のために動く御用聞き」に徹するのです。頭上に高き使命感、心に誇りと向上心、つねに素人の謙虚さで、聴き駆け回る狩人よ。
【戦士】ビジネスはマーケットにおける戦い故、広報も戦いです。この感覚のない人には最前線でもあり参謀でもある広報をやり遂げることはできません。
ライバルとの経営競争における報せる力の戦い、知恵の脳力の勝負です。見えない情報をいかに経営として司るか?そこに、「何のために」という大義があってこそ『司る』ことができるものです。戦いの感覚のない人は去るべきです。
■広報卓越者たれ!(2/2)
私たちは、日々「自分広報」しています。まず自分が「自分広報者」であり、次に、「会社広報者」であることを肝に銘じなければなりません。
そしてこれからは、「広報卓越者」を目指しましょう。「卓越者とは、自分自身に正面から向き合い、人間は所詮欠如体でしかないことを深く自覚して、より高次の人格を目指して日々精進する人間のことである。それはまさに、組織と個人の両人格のより高次の統合を目指して日々精進する『あなた』だ!」花村邦昭『卓越者』
広報は崇高にして典雅なる経営の仕事」です。広報を全うすれば、どの分野の仕事にも卓越した業績を遺すことができるものと信じます。そこで広報を志す者は、自らの存在意義と崇高な役割を確信、「直言の気概」を持つことです。
つねに「私見」を述べること。それが存在の証です。自らの独創性発揮の場です。クリッピング一つにしても、一行でも「コメント」をつけるよう努力しましょう。
「直言も『時には』辞さぬ誇りと勇気(言うべきことを、言うべき人に)言うべき時に断固言うべし」の志を持って敢然と実行するのです。
品性ある人物が品性ある会社を作る。善なる会社を作るには善なる人物を増やす以外にはありません。広報に携わる者は、日々自らを磨きましょう! 人間 を高めるのです! 自分の考えを大切にし、会社のビジョンに向かい、人々の幸せ、地球との持続的な共存を目指しましょう。
「王道を凛々と歩け、目指すはビジョンに志なり」です。「有能でなくとも有用であれ!」「仕事」とはすべて「作品作り」とみなすことができます。言いかえれば、すべての人間が「アーティスト」なのです。
私たちの仕事そのものが、日々の作品作りなのです。主婦の家事も然り。「真・善・美」に近づこうとすることはすべてアートなのです。広報の仕事は、会社内をアーチストの集まりにし、社外にその作品を日々提供し、会社の周りのすべての人たちに喜びを、あらゆるものに豊かさを与えることです。
「広報が人間を作り、会社を築く」ことを学び、これからのキャリアアップさらには人間力アップへの道筋を確かなものにしていただければ、うれしく存じます。
去る4月上梓の『広報・PR実務ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)も先月の『わかる!使える!広報活動のすべて』(PHPビジネス新書)においても新しい定義を与え、自分と会社を一致させ、真人間になること、つまり広報の卓越者を目指すよう推奨しています。
【山見博康記】