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週刊東洋元経済編集長インタビュー
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東洋経済新報社 元週刊東洋経済編集長 H氏インタビューしました。
■電話フォローを忘れずに
山見―御誌の取材体制の特徴はありますか?
H氏―弊社は3800社上場企業全体に記者が担当し、そのうち1600社を四季報で取り上げています。つまり、上場企業の場合には業種ごとに担当記者を置いて何とか対応していますが、非上場企業までは、現実になかなか手が回っていないというのが現状で、取材体制に関しては、今後の課題でもあります。といっても、専任はいませんが、非上場の中堅中小企業でも新しいユニークな動きがあれば、積極的に取り上げていきたいと思っております。
山見ー もし、いいニュースネタをもっていて御誌に掲載してもらいたい場合には、具体的にどうしたらいいのですか?
H氏―上場企業の場合には、該当する分野の担当記者に直接コンタクトしてください。それがもっとも近道です。非上場の場合には、すこし工夫してもらう必要がありますね。
山見―どんな工夫が必要ですか?
H氏―弊社を含め、一応きちんとしたメディアに共通する問題は、名前のない企業をどのようにしたら取り上げるかです。取り上げるということは、メディアとしてその情報や会社を評価した結果OKするわけですから、紹介するからには責任が生じるわけです。この会社は大丈夫だというお 墨付きを与えるようなものです。だから、無名企業には慎重になります。
有名なメディアほどコンサーバティブになりがちですね。
山見―すると具体的にどうしたらいいでしょうか?
H氏―簡潔にいえば、独創的な内容であるというのは当然として、それに信用力をつけるには、まず一つには、数字的な裏づけをきっちり出しておくべきですね。これが重要です。次に、どこか信用力のある人あるいは企業に紹介してもらうことです。
そうすると、担当記者も調べる手間も省け、納得のいく裏づけをもとに取り上げやすくなるわけです。
つまり、記者はその分野については素人ですから、内容評価が難しく、とくに技術的な面になると実際にどの水準の技術なのかが判らないのです。そこできちんとした紹介者の紹介がもっともいい方法でしょう。飛び込みで連絡されても、なかなかお会いするまでには行かないと思います。
山見―それではコンタクトするにはどうしたら行きますが。
H氏―それなら、編集部にお電話いただければ、担当記者を紹介しますよ。
山見―毎日プレスリリースはどのくらい入いりますか?またそれをどう使っていますか?
H氏―毎日、凄い量のプレスリリースが送られてきます。主にFAXですね。それ以外に担当記者に直接送られてくるものもありますから、一概に言えませんね。あまり多いので、ほとんど読む時間はないというのが現状です。
折角送っていただいたのですが、プレスリリースを見て記事にすることはありません。何が重要かが分かりにくいリリースが多いせいもありますが、それよりも手に取る時間がないのです。だから余程のニュースバリューがあるようなものであれば、電話で口頭説明するなどフォローするといいでしょう。
■雑誌特有のやり方へのアドバイス
山見―雑誌特有のニュースネタやその出し方やリリースの書き方で何かアドバイスはありますか?
H氏―新聞用には短くてもいいのですが、雑誌用にはストーリー性のある物語 がいいでしょう。何を訴えたいのかメリハリをつけて・・・。その背景だとか、技術の資料だとかその後の取材に役立つような資料があるといいですね。直ぐは取り上げないにしてもあとで調べる資料になり得るものは喜びます。繰返しになりますが、信頼性を高めるように紹介者をつけるなどの工夫が必要です。
山見―プレスリリースはいわゆる一斉発表で、ライバルメディアにも同じ情報が行っているのですがそれについてはどう思われますか?
H氏―上場会社であれば、決算とか人事とか“公式”に発表すべき案件もありますが、それ以外のものは、個別に接することを重視しています。メディアも競争しているのです。特に雑誌は単独取材が原則です。記者会見などでの話しはきっかけには なりますが、必ず個別に取材します。その時にあるテーマに対するストーリーとか経営や人生に対する見識などをお聞きするのです。
記者もジャーナリストとしての誇りを抱いているので、記者とのダイレクトのコミュニケーションを大事にして欲しいものです。担当記者とできるだけ1対1のコミュニケーションを欠かさないことです。そこで社の課題や問題点なども率直に議論していく姿勢がいいと思います。記者に遠慮なく反論してもらったらいいし、そんな日々の活動の方を重視しています。
私が記者にどうこう指示することはまずありません。ほとんで個々の記者の判断に委ねています。編集長を知っているから何とかなるだろうというのはまったく間違いです。
山見―上場企業が初めてコンタクトする際のアドバイスがありますか?
H氏―とても魅力的な素材をお持ちでも、最初にお会いするにはやはり信頼で きる人からの紹介がある方が話しが早いと思います。つまり、その経営者や企業について評価する時間もないし、評価力もないのです。
それに信頼のおける評価機関の技術データなど客観的に証明できるものを工夫してください。プレスリリースを送られても取り上げることはありません。信頼性を築くためにも、新聞に出ていることは信頼性と知名度という意味で大いにプラスです。
新商品サービス関係は、そのページをもっていますので「新商品担当者宛」と書いて送ってもらえれば、取り上げられる可能性はありますよ。
とにかく、記事は、独創性と創作性がもっとも大切です。
三つの原則があります。それは、
[1]人のマネはしない
[2]いいなりにならない
[3]PRしない
ということです。
これは他でもないジャーナリストとしての、プライドでもあります。新聞記者はどちらかというと、速報性が必要ですから、リリースを右から左に流しがちですが、雑誌の場合にはじっくり独自記事ですからきちんとした著作権が発生します。プレスリリースに著作権はありません。
山見―率直なアドバイスに感謝します。