共同通信 経済部長 インタビュー


山見―中小企業の情報つまり記事やニュースは重視していますか? 

S氏―重視しています。特に、地域性があるもの、地方への工場や店舗の進出など

山見ー企業が、いいニュースネタを情報提供して報道(記事に)してもらいたい場合には、情報提供を歓迎しますか?初めてコンタクトする場合どうしたらよいでしょうか?

S氏―やはり、人の紹介があるとスムーズです。経営者や実績のあるPR会社などを通じていただければ、お話はうかがいます。地方の企業なら、共同通信加盟の地方紙の紹介も歓迎します。このほか、商工中金や政策投資銀行などの公的金融機関、地方銀行などを介してアプローチする方法もあるかもしれません。それ以外は、経済部デスク宛にニュースレターの郵送でしょうか。

山見―中小企業から、いきなり経済部に情報提供の申し入れがあった場合きちんと話を聞いてくれますか?

S氏―お話はきちんと聞くようにしております。やはり、その会社が信用できるかどうか、次にニュース性の判断です

山見―コンタクトする際の秘訣がありますか?何をポイントに話したらいいですか?

S氏―あまり知られていない、単独の企業を記事化するにはやはり書く方にとってもその企業の信用度などハードルが高いのが実態です。
流行のトレンドや社会的な必要性などの背景が分かると「まとめもの」的な扱いが可能になります。この場合は同業他社の製品やサービスと列挙する形で記事化されるケースが多くなります。

山見―一斉発表と個別取材要請(情報提供)ではどちらを大切にしますか? 

S氏―一斉発表は、その日に記事化しなければならないというプレッシャーがあり、よほどのニュース性がないと、ボツということになります。個別取材だと、ニュースの需給に応じ  て記事化できるのと、時間のあるときにゆっくり再取材ができるので、当方にはやりやすさがあります。どちらを大切にするかは、あくまでニュース性の判断です。 

■1対1の取材が基本

山見―最近、PR・広報の重要性が認識され、力をいれる企業が増えていますが、「広報とはプレスリリースを巧く書いて配信すればいい」という風潮があるように感じています。もっと経営の一環として人間としてのつながりが大切ではないかと危惧していますが、メディアとしてはどうお考えですか?

S氏―やはり、1対1の取材が基本です。リリースの書き方より、日ごろの広報活動で努力をしていないと、メディアへの接近は難しいと思います。
こちらも、知らない企業のニュースを書くことは高いリスクを伴います。
最近は、読者からのクレーム(記事を見て買いに行ったら売っていなかったなど)、訴訟リスクなど危機管理に非常に気を遣っています。 

山見―送付されたリリースは読みますか?1日に何通くらいのリリースが送られてきますか?取り上げる確率はどうですか? 

S氏―本社経済部への一斉配信は目を通しますが、ほとんど内容は吟味せず、必要、不必要を分類します。訃報は必ず目を通します。日に何通かは不明ですが、取り上げる確率はほぼゼロです。

山見ー発表案件では、どんな場合に記事にしますか? 

S氏―一概には言えません。知らない企業の製品や企業戦略はいかに興味深くてもリスクが多く、発表即、記事化は  難しいと考えます。ニュース性がありそうで、再取材が可能な場合に記事化の道が開けます。 

山見―どんなプレスリリースであれば、読む気になるのか書き方のポイントを教えて下さい。また、送付方法は?

S氏―やはり、人的なコンタクトがないと、リリースの書き方だけでは読まれる確率は変わらないと思われます。送付方法は郵送が好都合です。ファクスしたときに受信確認の電話を  PR会社からもらうことがありますが、非常に迷惑がられます。

山見―PRに力を入れようとする中小・ベンチャー企業へのメッセージ(アドバイス)をお願いします

S氏―PRはやはり人的なつながりが基礎になるべきで、従ってすぐに成果を期待すべきものでもありません。地道に関係を構築し、実績を積むしかないと考えます。

山見―率直なアドバイスに感謝します。


山見博康