静岡新聞経済部長 インタビュー
■Y氏インタビュー
山見―中堅・中小・ベンチャー企業は重視していますか?
Y氏―どのニュースも重視しているのですが、特に中小・ベンチャー企業に注目する理由は企業の99%以上が中小企業です。小さなニーズを嗅ぎ取り、製品化できるのは中小企業だと思うからです。小さくてこの先どうなるか分からないニーズ(ニッチ市場)にかかわっていては効率が悪い
からです。しかし、この小さなニーズやそれに対する取組みは大化けするかもしれません。
山見―個別の情報提供は歓迎しますか?
Y氏―大いに歓迎します。ニュース価値がわからないときにはご遠慮なく記者にご相談下さい。ただし、一方的に入ってくる情報提供は単なる商品紹介が多く、ニュースとは言い難いものが多いのが難点です。手前味噌にならないようにして下さい。送る場合は、FAX,郵送あるいは電話など何でも構いません。要は、内容と緊急性です。ニュースであれば取材時間も要るので事前にアポイントをお願いします。
山見―一斉発表の記事と個別取材の記事の扱いはどうですか?
Y氏―個別取材を重視することはいうまでもありません。一斉発表のネタの扱いはどうしても軽く(小さく)なりがちです。当社だけの独自ネタではないからです。
記事になるネタはいろいろありますが、国際性があるとか、トレンドだとかプラスαがあると尚いいです。地元紙なので、県内絡みのネタは掲載しています。県外の企業であっても何らかの形で県内の話題に結び付けることができれば記事として扱うことができます。県外で活躍していても、出身が静岡でもOKです。
山見ー読まれるリリース作成のコツを教えて下さい。
Y氏―1に簡潔、2に分かり易い、が基本ですね。1.は文章が長いと要点が散漫になり、読む気を失います。そこで要点を
明確にA41枚程度に収めてもらえればと思います。
2は背景や難解な言葉(専門用語)の説明が。必要ですし、表やグラフも記者の理解促進に役立ちます。何より読者にとって分かりやすい記事を書くのに必要ですから。送る場合は、まずFAXです。メールは読まれない可能性もあります。
山見―PR初心者へのアドバイスをお願いします。
Y氏―ニュースネタを提供する場合には、何がポイントかがわかるようにPRし て下さい。タイトルに「国内初」「県内初」などの表現もその根拠を示して下さい。
また、医薬部外品やサプリメントは公共機関のお墨付きのようなものがあれば明記して下さい。記者クラブには毎日何十枚と資料提供がありますので、しっかりした内容でなければ取り上げられません。
自社の商品や取組みを延々と書き綴り「興味があれば聞いてこい」と言わんばかりのリリースはまず読みません。
山見―地元ニュースではライバル他社に抜かれずに、逆にスクープするように指導されているでしょうが、具体的に部下教育ではどうしていますか?
Y氏―静岡県には上場会社が80社くらいはありますので、毎日配布されるリリースだけで紙面は埋まるほどあります。しかし、部下には、「手帳をアポイントで埋めろ」と指導しています。すると、自分で動かざるを得ません。もちろん、重要な記者会見には急でも必ず出席する必要があり
ます。地元ニュースは落とせませんから。
しかし、県内のことで、知らないうちに一斉発表されたら“抜かれたと思え”ときつく言っています。つまり、プレスリリースを配布されたり、記者会見を開かれたりされることは記者としては、本来その前に個別取材しておくべきことだからです。
自然と自分に厳しくなりますよ。足で取材すると現場に行くので、経営者と親しくなります。IT時代といっても、記者は現場で個別取材することが基本中の基本。この心得はいつの時代になっても変わりません。
【山見博康記】