■独創性な情報を(2-1)        
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 過日、日経前MJ編集長A氏との対談の機会がありましたのでその要旨をまとめてみました。                          
 山見―御紙では、中小企業の記事は重視していますか? A氏ーもちろんです。ITの発達によりどしどし情報発信することは大歓迎です。日本経済にインパクトを与える新しい息吹きは、大企業よりむしろ中小企業から出てくるものです。既存社会に何らかの変革をもたらすような画期的アイデアが入った情報は、扱いが大きくなりますよ。大企業に追随しない独創性のあるニュースを期待しています。 
 山見―どんな内容の情報であれば取り上げやすいですか? 

 A氏―何といっても独創性です。しかし、単に面白いからといって記事にした
場合は失敗も多く、リスクがあります。大企業は、十分な市場調査をやって新商品開発を進めますので、失敗の確率は低いのですが、中小企業やベンチャーとなると、独創性や新規性はあるがはずれる恐れも大きく、掲載リスクは大きいのです。しかし私は、常識的な考えでは取り上げない中小企業の情報でも記事にしたいと思っております。私たちは情報を客観的に評価し、事業性があるかどうかで記事にします。 ところが中小企業の話は往々にして情熱や使命感が先走りするものです。やはり数字の裏づけがないといけません。だから、ホットな使命感と、クールな数字・確実性とのバランスあるお話がいいのです。 
 山見―初めての場合、日経のどこにコンタクトしたらいいのでしょうか? 

 A氏―それはもう記者直接に自分でやることです。編集長やデスクというより、むしろ取材センターや記者クラブに電話してどんな内容かを話すと担当記者を教えてくれます。 
 山見―プレスリリースをもっとも嫌いな人は、実は記者で「個別取材」が原則だと思いますが、これについてはいかがでしょうか? 
 A氏―プレスリリースを当てにし、一律の情報を口を開けて待っているような横着な記者は心得違いしています。リリースをもとに書いた記事は、独自記事にはならないので評価されません。つまり、プレスリリースは、いわばチラシのようなものです。 

つまり最近、HPに発表リリースを載せる企業が増えましたが、いわば広告の一種との見方になっています。PR会社がリリースを書いてたくさん配布するようですが、それは、広告をばら撒いているようなものです。 

            
 ■独自取材が一番(2/2)        
 山見―記者にとって大切なものはどんな記事ですか? 

 A氏―それはもう独自取材記事です。それも、記者があるテーマに問題点を見出し、それを独自のネットワークの中から自分で探して取材して書いた独創的記事、これに勝るものはありません。そのためには日頃から自分の足で歩き、自分の目で確かめて勉強しなければなりません。 

企業からの情報提供前に、その情報を掴んで取材することの方が勝ります。記者とは本来自分で獲物をとるべきなのです。次に自分だけに情報提供を受けて独自取材することです。 
担当分野において一斉に発表されたリリースを読んで初めて気付くのは、はっきり言って屈辱ですね。記者は本来リリースを憎み、また恥じるべきなのです。 最近はネットの発達ですぐウエブに掲載します。新聞は掲載までにタイムラグがあるので、速報性と正確性ではもう負けていますよ。 
 新聞社は、企業情報を分析し、第三者として社会的視点から客観的に評価して解説するという機能をきちんと果す役割があります。それによって掲載された記事は客観的価値を伴って信用・信頼が増して、イメージアップにも大きく貢献するのです。 

 記者は、暗闇に眠るダイヤモンドのような原石に光をあて、世の中に役立つように報せてあげることです。メディアはいわば評価会社ですから、その評価によって読者に信用・信頼を促すのです。 

 第二には、記者が企業から“個別に”情報提供を入手できるかどうかです。メディアは、企業数に比して記者数も限られるし、タイミングもあるので、個別であれば喜んでお聞きします。 三つ目は一斉発表されたリリースですが、それは後回しです。取材価値はずっと低く、ほとんど見ない記者もいます。どんどん配布されてくるリリースだけを書いている記者は最低で単に“早く正確に”であれば、新聞はネットに劣ります。速報性ではテレビや通信社にも負けるし、実際新聞社でもネット関連の部署が速報しています。 
今やリリースは、広告の延長という色彩が強くなってきたのです。PR会社などもその辺を認識する時期ですね。事務的に流すリリースは無意味です。 新聞の存在意義は、適正評価機能にあります。方法は、一般的に言えば①FAX②メールでしょうがケースバイケースです。ニュース性のネタに関しての郵送は論外ですよ。(次号に続く) 

山見博康