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│01│山見博康の「社長が広報を兼ねる」……メディアを味方に
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■非公平が公平でもある(1/2)
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「マスコミ対応は公平におこなうこと」は、正論です。しかし、つねにそうとは限りません。そのようなケースがいろいろ起こるので、メディア対応は難しいのです。
いや、難しいというよりも、メディアといっても、人と人との付き合いである以上、臨機応変に行うということが大切です。言い換えれば、公平が公平ではなく、非公平の方が真の意味では公平な場合が多いのです。つまり、公平は真髄ではないとも言えましょう。
他の一般商談においても、そういうものではないでしょうか? いわゆる顧客にもいろんな段階があります。駅前のうどんやさんでも、百貨店においても、初めてのお客様あるいは一回限りの買い手には、それほど手厚い接遇はしないでしょう。
しかし、何度も来てくれるお客様には、まったく異なる対応をしているはずです。同じ礼をするにしても“心のあり方”が違いましょう。
つまり、得意客にしても、普通のお得意様と上得意客との間では接遇方法を少しは変えていることでしょう。それが自然でありますし、通常のビジネスのあり方としても自然でしょう。
それは、「差別」ではありません。「区別」というものです。メディア対応においても然りです。「公平」を保ちつつ、個々には、「非公平」での記者対応を心がけることです。
具体的には、なじみの記者には特に、より良い情報を差し上げることが最大のサービスでありましょう。より多くの情報・より確度の高い情報をいち早く出してあげるといいのです。
■非公平とはどんな場合?(2/2)
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それではどのように「非公平」に行うのかが、問題になりましょう。まず、一斉発表のときには、多くのメディアの目がありますし、その場所で、ひそひそ話をしていては、人目につきます。
そこで、発表が終わったあとに別室にお呼びして、少し詳細な話をしたり、より好意的に書いてもらうための情報提供を行い、同時にお願いをすることになります。
このようなお願いができるためには、日ごろのお付き合いをどのくらいきめ細やかにやっているか、あるいは、特ダネになるようなニュースネタをいかに提供しているかがポイントなのです。
中小企業の場合には、社長じきじきにお話することがもっとも効果的です。
発表内容の詳細について、より細かなニュアンスをお伝えすることによって、記者の書ける範囲を広げるように計らいます。すると他紙よりも内容が濃くなり、差別化された記事になるので、記者としては十分な恩義を感じるはずです。
その分、全体の記事のトーンが和らいだものになりましょう。具体的にどこにあらわれるかというと、「語尾」の表現になって現れるケースが多いのです。文章の最後が、好意的になっているか? それとも、企業の悪い面ばかりを強調し、社会悪のような表現になっているか?
それによって、同じような記事においてもまったくといってよいほど影響力が異なってきます。危機においては、特に「メディアを味方に」は鉄則です。危機発生の最初の段階で、「逃げている」「隠している」などの印象を決してもたれてはなりません。公明正大にそして公平に対応しつつ、仲のよい記者の協力を仰ぐことができれば、諸問題も軽減されることになりましょう。
【山見博康記】