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│01│山見博康の「社長が広報を兼ねる」………………………三ない原則を守れ
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■危機防止の三ない(1/2)
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危機防止の三ないは「逃げない」「曲げない」「挫(くじ)けない」。
中小・ベンチャー企業は何が何でも社長が主役ですが、危機的状況においてはなおさらです。まず現場に直行して、自ら事態を直視し、現状をつぶさに把握すること。
そして率先して危機の原因や対応策を検討し、とにかく現時点での統一見解をまとめることです。それが何より大切です。その時に、「今明らかにできること」と「今は、明らかにできないこと」にわけることが重要。
それをあいまいにしておくと、トップのいうこと、担当役員のいうこと、それに広報担当のマネジャーがいうことがマチマチになって、記者が混乱するのです。
あげくのはてに、記者に鋭く質問され、突っ込まれて右往左往することは、最近の不祥事に関するテレビニュースなどでよく見かけるシーンで、おわかりでしょう。すべての質問には明確に答えられないことを、マスコミは判っています。
従って、繰り返しになりますが、大事なことは、「今、明らかにできること、或いは今、判っていること」と「今は、明らかにできないこと、まだ判らないこと」を明確に区別して回答すること、これがポイントです。
どうしてもそこをあいまいにしがちなのです。更に後者については、明らかにでき次第、その都度「今、明らかにできること」として情報開示しなければなりません。
率先して事態を取り仕切り、しかも解決できる人は社長以外にはいません。そのためには、とにかく現場に行くことです。すべて、受けて立つ。
いかなる事態であっても絶対に投げない姿勢を貫くことが殊のほか重要です。
事実を曲げてはいけません。
ゴーン社長も「短期的な利益を追求するために現状をねじまげてはなりません」と明快です。逃げると地獄へと直行していると思えばいいでしょう。社長はどんな場合でも挫けてはならないのです。
■マスコミを味方に(2/2)
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情報開示が大切とはいっても、企業として守るべき情報もあります。そんな懸念を感じたら、率直に弁護士とも相談の上判断することが大切です。その辺を確認しないまま、発言しているとあとで取り返しがつかないことにもなります。
このようなことは、いったん発言するとなかなか覆すことは困難です。従って最初の段階からきちんとした、自信を持った対応が必要なのです。
社長として、断固責任を果す姿勢が一貫していれば、記者の人達も協力の姿勢になってくれます。私の数々の経験からもそうです。なぜならメディアとしても、基本的に明確な対応を期待しているのですから。
例えば、事件事故の場合には、通常は社会部記者が担当することになります。
経済部担当と違って、一過性のニュースを取材するので、時間に追われるのと他社との取材競争に負けない為に必死となっています。社会部記者といっても基本的な対応方法は経済部記者と変わるものではありません。公明正大に凛然とした対応が不可避です。
しかも、メディアの顧客、つまり、読者或いは視聴者は今か今かと事故の成行きやその真相などを一刻も早く知りたがっていて、そちらの方からのプレッシャーも相当なものでしょう。
記者は、社会の公器とお客様第一主義という両面からの使命感に燃えて取材にあたるので企業のエゴや個人の無責任さなどを断固許すわけにはいかないのです。
従って、社会に貢献する企業経営者として、同じ立場に立って協力する姿勢になれば、きっと記者も共感を覚えることになってきます。ましてや、事件・事故の責任がすべて企業側にあるばかりではありません。
マスコミは自社の立場を社会の人達にきちんと伝達、報道してくれる「代弁者」であるとの認識が必要なのです。