新時代!社長が広報を兼ねる
(連載) [2003/07/01配信]
■メディアの組織を理解しておこう(2-1)
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代表的なメディアである新聞を例にメディアの編集部門つまり記事やニュースに関わる組織を理解しておこう。
読売などの一般紙では編集局の中に経済部、政治部、社会部などがあり分野別に別れている。企業に関するニュースは通常経済部が担当するが、素材(ネタ)によって社会部、文化部、生活部なども関係することを忘れてはならない。
企業としてもっとも重要な日経では経済部は銀行などのマクロ経済を扱い、企業モノは産業部やベンチャー市場部などが巾広く担当する。産業部には、三人の産業部長の下に日経産業、日経流通、日経金融という全国産業三紙の編集長がいてそれぞれの編集を担当している。ベンチャーから店頭公開前後までの中堅中小企業はベンチャー市場部との付き合いを重要視するとよい。
同じく、日刊工業新聞では、第一、第二産業部および中小企業部が、日本工業新聞では経済産業部と創造技術IT部がそれぞれ担当する。
一方、一般紙にある地方部というのは、各県にある支局を統括する部署である。大阪、名古屋、福岡、札幌にはそれぞれ地域本・支社があるが、特に中小・ベンチャーを担当する部署はなく経済担当記者がカバーしている。
次に、業界紙・専門紙には社会部や政治部はなく、その分細部にわたって担当が別れきめ細かなニュース素材に対応できる体制になっている。
テレビ各局は十数年ほど前からこぞって経済部を設立し、経済報道にも力を注ぐようになり、最近では企業モノの特集番組を多くなったきているのは喜ばしい。
■メディアはメーカー!(2-2)
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記者がニュース素材を見出してから新聞が出来上がるまでのプロセスを理解しよう。
(1)記者:企業や個人からニュース素材を見出し原稿としてデスクに提出
(=仕入れ、一次加工)
(2)デスク:(文字どおり「机」というマスコミ用語。一般企業の管理職)原稿に加筆・修正。内容不十分の場合には追加取材を命じる。その日の紙面に取り上げる原稿を選定する。編集会議にて最終原稿が決定すると基本的な紙面設計を行い整理部へ送る。担当紙面における大体のレイアウトも行う。(=二次加工・一次検査)
(3)整理部:原稿を客観評価し、各部にとらわれない独自の判断で見出しを付け最終的な紙面作りを行う。 (=品質管理・最終検査)
(4)印刷・配送:(=製造、出荷)
メディアはソフト産業だが、いわばメーカーである。つまり、記者がニュース素材を探し取材するのは、原材料の仕入れだ。その原材料は、要求品質水準を十分満たす価値あるものでなければならない。
メーカーで原材料が悪ければ良い商品が造れないのと同様に、良いニュース素材でなければ良い原稿が創れない。「造る」と「創る」との違いはあるが製造しているのだ。
デスクや整理部はそれぞれ加工、検査工程ともいえる。品質管理も厳重だ。
つまりメディア全体がメーカーとしての機能を十二分に果している。記者はよりよい原稿を目指して独自のニュース素材を欲している。
企業経営者が他社との差別化を図り競争力を付けようと、より良い品質の安い原材料を常に求めているのと同じである。つまり、企業は情報というメディアの原材料を握っている。その商品の品質に関わる生命線を左右する有利な立場にあるといってよい。
従って、社長は、メディアに対し、競合他社よりもより良い原材料を供給してあげるようにすることだ。それが広報戦略の原点でもある。 【山見博康・記】