新時代!社長が広報を兼ねる(連載) [2003/02/15配信]
このコーナーは、まず社長である自分が先頭に立ってマスコミ取材を受けるぐらいの気構えが必要と説く、社長のための広報マインド獲得術。筆者はチーフバリューインテグレーターの山見博康氏。プロフイールはこちら。
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■広く報せる方法(3-1)
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「広報」にはこれまでいろいろな定義があります。ある定義によると「広報とは市民や社会との良好な関係つくりのためのコミュニケーション活動である」といわれます。
広く報せるには大きく分けて二つの方法があります。それは「広報」と広告です。英語でいえば、広報は「Publicity パブリシティ」、広告は「Advertising アドバタイジング」といいそのままでも通用します。
因みに宣伝は「Propagandaプロパガンダ」といい、広告の一種ともいえますが、ちらしの配布や街頭演説などのイベント的なことも含むことになります。広報や広告関係などマスコミに関連した仕事に従事している方々はそれらの違いをよくご存知でしょうが、一般にはそれらを混同して、その違いが理解されていません。経営者にしても同じです。
そこで、広報と広告の違いを解説しましょう。中小・ベンチャー企業経営者や起業を志す人達はしっかりとその違いを理解し本来の広報について学んでいくことをお勧めします。
まず「広報」とは、「企業が社内情報を選択・加工し、ニュース素材としてメディアに提供する。メディアは自らの判断・都合により、記事・ニュースとして報道(記事掲載)すること」です。
従ってコストはまったくかかりませんが報道されるかどうかはわかりません。つまりそれぞれのニュース価値によってメディアが判断するからです。
企業がいいニュース素材だと思ってもだめな場合もあります。報道の可否その内容、大きさ、時期などを含めメディアにお任せとなります。そのために、もし報道された場合には、メディアの客観的判断に基づく報道として、その記事やニュースの信頼性は圧倒的に高いのです。
しかも波及効果たるや想像や期待をはるかに上回るものがあります。小さな記事でもそれが増幅されていくその伝播力は計り知れないものがあるのです。
■広報は広告とは次元が異なる!(3-2)
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次に「広告」はどうでしょう。「企業が予算に応じてメディアのスペース・時間を買う。メディアは、企業の指示通りに広告・CMとして報道すること」です。
企業は経営戦略に基づき、広報広告戦略を策定します。広告は、その広告予算に応じて、どのメディアに、どの時期に、どの大きさ(長さ)にさらにどんな内容で広告するか、企業側で計画的にできることが最大の利点です。
しかし、狙った効果を出すためには大きなコストがかかります。消費者に密着した商品を扱っているアサヒビールやサントリーあるいは資生堂やコーセーなどの大企業はその予算は年間数百億円にも上ることでしょう。
しかし、その内容は自画自賛です。一方的に企業のいい分を表現するからです。読者や視聴者は割り引いて見ます。つまり客観性・信頼性は劣るのです。
広告には「記事広告」も入ります。雑誌などの場合には「ペイドパブ」ともいわれます。「企業は広告スペースを買うが、記者が取材してまとめる」という中間的なものです。コストがかかる点では広告と同じですが、広報効果も得られかつ金額的には相当軽減できます。
広報と広告宣伝の違いはお分かりですか?その共通点はいずれもメディアを利用するところですが、最も大きな違いは、広報はコストゼロの代わりにお金で買えないもの=ニュース価値を提供することです。価値(バリュー)があればメディアが喜んで報道にしてくれます。
従ってその客観性と信頼性がまったく異なるのです。私は広報はより高い次元のものだと思います。以上から、費用がかからず大きな効果が期待できる広報活動を継続的に実践していきましょう。
もちろん、資金的に余裕があれば広告宣伝も大いに利用することによって大きな相乗効果が得られることはいうまでもありませんが・・・。
みなさん!! もっと広報に目覚めましょう!
■広報は情報ビジネス(3-3)
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広報活動は、記者に情報を提供し記事やニュースにして報道してもらう仕事であり、情報を商品として取り扱う「情報ビジネス」です。
社内からいいニュース素材である価値ある情報を仕入れ、そのニュース価値にふさわしいメディアに提供することによって記事として報道される。そして最終的な成果は新しいビジネスを創造していくことよって得られる。 そこに金銭的やりとりは一切なくあるのは「読者へのニュース価値」だけです。従って、企業のメリットは当面のビジネス創造にもつながることに加え、長い目でみて知名度アップやイメージアップを実現していくことであり、それが目には見えないが大きな利益といえましょう。
広報を平たくいえば「おすし屋さん」。日々の企業活動に関する社内外からの問合せに対し方針に沿って臨機応変にきちんと対応していくのは「広報」です。
最新情報を取り扱いうので、陳腐化した情報は役に立ちません。すし材料も新鮮でなければならない。すし材料もニュース素材も同じく「ネタ」というのも面白い。常に新鮮で他のおすし屋さんでは味わえないようなおすしを出すお店には、お客様が立ち寄ってくれます。
更に違ったネタを仕入れ、より新鮮でおいしいおすしを出せるお店ならまた喜んできてくれる。そのようなおすし屋はきっと繁盛しているに違いありません。
しかもお客様にすし業界全体のことあるいは仕入れ関係のマーケットなどについていろんな話をし、一家言もつようになると、お客様はその話題の面白さにも惹かれます。
そのお客様を記者と思ったらどうでしょうか? 中小・ベンチャー企業の社長は、このようなおすし屋さんを目指すべきです。どこでも仕入れできない新鮮なネタを提供しお客様(記者)に進んできてもらえるおすし屋さんになることをいつも心がけるといいのです。
以上のように、広報は広告宣伝と異なる次元の活動であることを認識し、経営の一部として日々の対応を実践していくことが大切です。
【山見博康・記】
作成日:2003-02-15