「猿真似」 我々が何かを覚えるのは、先ず真似することから始まる。しかし、真似ばかりして いてはつまらないので工夫を加える。それでもあまり満足できない。そこで、何か、 自分独特のものを考えだしたくなる。我々は自分独特のものを考え出した時、非常に 満足し、言い様のない満足を感じる。こうして人間は進歩成長していく。ところが、 何時まで経っても猿真似しかしないで一生を過ごす人がある。こう言う人には進歩は ない。ヒルティは『幸福論』の冒頭に「仕事の上手な仕方は、あらゆる技術の中で 最も大切な技術である」とし「我を忘れて自分の仕事に完全に没頭することの 出来る働き人は、最も幸福である。例えば、ある題材を得てこれを表現しようとする時、 全精神をその対象に打ち込まずにはいられない芸術家や自分の専門以外は殆ど何物も目に 入らない学者や、否、時には最も狭い活動範囲に自己の小天地を築きあげている、色んな 酒類の「変わり者」でさえ、この上なく幸福なのである」と目の前の仕事に没頭する 事が幸せであると凡人を激励している。 なぜなら「人間の幸福は自己の優れた能力を自由自在に発揮するにある」(アリストテレス) からである。 |