今日のテーマ:「人間としての面目」
2013年1月1日(火)
すべての者が限りなく求めてやまないもの、それは生きる悦びである。何かの生き甲斐を、悦びを求めて人生をさまよう、これがありのままの人の姿である。
金も力も地位も名誉もすべて、生きがいを、悦びを得るための備えに過ぎない。
どのような思想も、信仰も、はたまた芸術も、科学も、政治もこの線を外れてあるということはない。またあってはならないのだ。
だが、理論と実際は常に一致しがたく、こと志にそわぬ矛盾の中でわれわれは
苦しむ。知識も才能も富も地位もみな、われわれの生活を悦びにつなぐ導火線でなくてはならない。
しかるに、われわれは地位や才能をもって不幸を招き、知識や財産をもって苦悩に引き換える。何かそこに錯誤がある。その錯誤矛盾を解決するもの、それは真の教養である。教養とは単なる物知りでもなければ、程度の高い教育と言うことでもない。
真の教養とは、いかなる条件の中にあっても、自己の尊厳を崩さず、相手の立場を理解してこれを善処し得る能力である。この能力あってはじめて、一切のものを生かし、相互に生活を豊かにし、生きる悦びを享受し得るのである。
その生き方こそ、人間としての面目ではあるまいか。(池田敏子)