今日のテーマ:『人に好かれる法』第91条
「幅のある人間」
2008年9月15日(月)NO.182
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第91条 幅のある人間
頑固一徹の人は、その頑固さを好く、或る少数の人々には、迎えられるか知れないが、機に応じて融通の利く人の方が話しいい。あれはあれだけの人間だ、ときめてかかられるようでは近づく人も少なくなる。
融通が利くということは、その人間の力の豊かさを示し、常識の広さを語るものである。また大胆さでもある。
小心で狭い人間は融通が利かない。
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幅がある、深みがある、広さもある
・・・だから好かれる
人間は、あらゆる形状の集積です。どんなことにも、その優れた頭脳と実行力によって、対応できる能力を装備しています。つまり、融通無碍な存在なのです。
この融通性というものは、人間の広さとも言えましょう。
人間を家に例えれば、間口の広い方が入りやすいものです。また、奥行きの深い家がいわゆる奥床しい家ということになり、奥行きの深い人間と言えば、人格も高い教養人で、何ごとにも思慮深くどっしり落ち着いた高潔の士でありましょう。つまり、能力の豊かな、度量の大きい人の方が好か
れることは間違いありません。
そのような人は人望があります。人望とは、「多くの人々がその人に寄せる尊敬、信頼、憧れあるいは期待の心」です。人望を備えた人には、いろいろなことに対して、幅広くそして奥行深く考えるゆとりや幅の広さがあるものです。
「幅」といえば、私には強い思い出があります。
神戸製鋼に入社して5年後、1973年、3年勤務した大阪の鉄鋼販売部から、憧れの鉄鋼輸出部に配転辞令により、東京本社勤務になりました。希望が叶えられたうれしさもあって、何でも吸収しようと無我夢中で仕事に取り組んでいました。しかし、なにせ初めての仕事。これまでの国内、
それも関西以西の造船会社や重工業から軽工業までの鉄板の販売から、世界というスケールの大きい広がりのある仕事なので、英会話から貿易実務、受発注の実務まで学ぶことも多岐に渡っていました。日々いろいろな商社の各地域担当の商社マンとの対応など目の回るような毎日でした。
そんな時、直属の課長からあるテーマでの業務命令を受けました。それは、「ある限られた範囲の仕事」と言えるものでした。それを指示された通りの常識的方法で行うのか、あるいは少し別の方法で行うかなどを思案し、上司の指示をいかに遂行すべきかを模索していたのです。
すると、小林達郎部長が、部屋の隅にあるデスクからわざわざ歩み寄られ
「山見君、何か悩んでいるようだな。どうしたのか?」
問われたので、私は、
「課長からこんな命令を受けましたが、どのように遂行するべきか考え、迷っているのです」
と率直に答えたところ、
「命令には幅があるんだぞ!」
と諭されたのです。
小林部長は、日頃から部員からも社内の人たちにも敬愛されている正義感の強い、高朗毅然たる武士のような方。私は、畏敬の念を持って接し、部下である誇りを抱いていました。また、慶応ボーイらしくダンディーで、いつもきちんと襟を正し、小柄ながらも大股で颯爽と闊歩している姿が印
象的。それもそのはず、空手で鍛えた身体と精神力で眼光するどくしかし、心は優しく柔和なお方です。
時に「山見君!」と呼ばれるや、「はい!」と大きな声で返事し、部長席の前に直立し、喜びを心に指導を受けたものです。
「命令には幅がある」という真の意味とは、
▼命令は線ではない。
どんな命令でも幅がある。
▼その範囲であれば、幅一杯に自分の独創 力を発揮すればいい。
▼その幅の広さ・深さは君の裁量次第だ。
▼その幅のどこをどのように歩こうと
それは君の裁量にある。
▼右端でもよい。左端がよければそれでも いい。
▼ただ、落ちないように・・・。
素直に自分のやれることをやりなさい。
と解釈できます。
それ以来、どんな仕事でもこの「命令には幅がある」の名言を思い起こし、創造性を発揮するよう努めています。すると、仕事への取組みをより広くかつ深く捉えられるようになるようです。
「われわれのあらゆる尊厳は、
思考のうちにある。
空間によって宇宙はわたしをつつみ、
一点のようにわたしをのみこむ。
思考によってわたしは宇宙をつつむ」 (パスカル『冥想録』)
頑固、偏屈、偏狭
・・・だから、嫌われる