「人に好かれる法百ケ条」
  第80条「慰め上手」 NO.167
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第80条 慰め上手 

 我々がさびしい時や不幸にある時に、それを救う力はなくても慰め手となってくれる人は、いつまでも忘れないものだ。しかし心ない人に訴えられれば、かえって傷を荒立てられたりする。うっかり打ちあけて、つらい思いをさせられたりする。その人がいいとか悪いとかにかかわらず、一
応その人の身になって慰められる柔らかい気持ちの人、そういう人々を誰でも求めている。それはあなたの方にも落ち度があるなどと、説教めいたことを真っ先にいう人は好まれない。

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「慰める」とは、大辞林によれば、
1.悲しんだり苦しんだりしている人にや  さしい言葉をかけたりして心を和やか  にさせ、静まらせる。
2.心に潤いを与えたり楽しませたりする
3.心の波立ちを静める。
ととてもいい意味です。

 常用字解(白川静)によれば、「慰」は、尉と心の組合せで「手(又)に火のしを持って布にこてをあてる形。火のしして布が平らかに、伸びやかになるように、心が伸びやかな状態になること」とあります。つまり、アイロンがけのイメージです。
 身も心も傷つきどうしてよいか悲嘆に暮れている人は、いわば、色んな汚れ・汗の匂い・手の垢などが至る所に染み込んで、しわくちゃになったハンカチと同じ。その汚れに合う適切な洗剤で早く洗い落としてしわを伸ばしてあげなければ、もう永久に取れなくなります。
 つまり、極度の貧困や心の限界に至る虐待などが続けば、それを乗り越えられた人は、強く逞しくなるし、乗り越えられなかった人は、僻みいじけて、もはや矯正できない程卑屈になり、世や人を憎み、心の荒みが取れず一生反感の日々を送るようになりがちなのです。
 そうなる前に、人の心へタイミングよくアイロンをかけてあげられる人は、相手に喜ばれ、感謝される尊い人です。強い布のような人には、最初からジューと熱く、絹のような人には、かなり温度を低くしたアイロンをかけてあげましょう。適切な洗剤とは、その心の傷に応じた優しい言葉、時には厳しい励ましです。これを間違えると汚れが一層染み込みもはや取れなくなることもあるし、きつい言葉(洗剤)の方がたちまち心の傷(汚れ)が癒されることもあるのです。私たちは、よい心のクリーニング屋さんになることを心がけましょう。
 人の心に適宜、適切なクリーニングをかけられる人は、慰め上手なのです。相手の汚れの状態をよく吟味して、その状況と本人の心のあり方をよってタイミングよく優しい一言をかけてあげられる人は、真に優しい人です。
「たった一言が人の心を傷つけ
 たった一言が人の心を慰める」のです。

 一言ひとことが、心に響くこともあれば、何気ない一言がいちいち気に障ることもあります。一人ひとり自分の心の奥底に問い正してみれば、かって何らか魂胆があって慰めの言葉もかけたことを思い当たることでしょう。言葉は言霊(ことだま)。私たちは、心に細やかな琴線を張り、相手の
> 心の琴線に共鳴するような音色にて慰めるように努めたいものです。  
 心が病んでいる時に、道端に咲く一輪の花にふと美しさを見、美術館の片隅にひっそりと掲げられた絵画の床しさに思わず立ち止まる。
「時宜にかなって語られる言葉は
 銀細工につけられた金のりんご」
        (ソロモン王の箴言)

 ソロモン王は、宮殿を飾る芸術品の中で特に金のりんごの飾りがついた銀細工がお気に入りだったそうです。
そこで、タイミングよく語られる、相手の心の深みにまで染み入る言葉は、その金細工と同じくらい美しく価値があるというのです。
 会話にせよ、活字にせよ、善い言葉を与えてくれた人に受けては心より感謝するものです。それは、言葉だけではありません。適切なときに、適切な言葉や態度で接してくれる人は尊敬されるものです。
 私たちは、それぞれ、真綿のように温かく、シルクのように滑らかな、愛しさ・優しさ・励ましや知恵を伝える言葉を語り、表情で表し、態度で伝える本能を持っているのです。それをいつも磨き、高めて、タイミングよく発揮しましょう。

「気のない一言、気のない目つき、気のな い仕草・・・だから嫌われる」