今日のテーマ:
プレスリリースこそ記者が最も嫌いだ! 
2007年6月10日(日) NO.4

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  プレスリリース! 実はこれこそ記者がもっとも嫌いなものです!これがわかっていない人は、PR(広報)の真髄がわかっていないこと。近年、“無料(タダ)で宣伝するPR術”なるものが流行っています。おおむね、「プレスリリースを“巧みに”作って、メディアに配信すれば、大きく報道され売上が急上昇しビジネスが大成功する!という内容。それによって、これが広報だという風潮が行き渡りつつあるようです。このような風潮に対してなにか憤りと憂いが次第に膨らんできます。
 私はそんな風潮を阻止せんがために昨年9月『山見式PR法』を著しました。広報の達人を目指す貴方は間違えてはなりません。プレスリリースの作成・配布は重要な業務ではありますが、広報全体の一部に過ぎません。つまり,出すだけが広報ではない。広報とはもっと広範囲にわたる高い次元の経営の仕事です。広報・PRという仕事を単に“プレスリリースと配信で知名度・売上アップする方法”というような短絡的かつ皮相的に捉えてはなりません。

 それは、経営そのものであり、企業・組織が果すべき義務としての崇高なる行いなのです。21世紀のPR活動は、そのような高い観点に立って行うべきものです。
広報活動とは、記者に「いい仕事をしていただく仕事」、記者との間でもっと人間的なつながり、つまりヒューマンタッチを重んじる必要があります。

 ある統計で、トヨタ自動車は、年間3百件もの記事を広告換算すると、約数十億(20億)円位になるといいます。それを取り上げてPRの効果を強調する向きもありますが、同社はこれをタダで行ったのでしょうか?それは否です。なるほど記事そのものには料金は不要でしょう。しかし、
それだけの記事を出すための実働広報担当は東京だけでも180人もいるのです。その給与など経費を含め一人1千万円としても、それだけでも18億円。しかも記事に出すために社内各部との調整・資料作りの時間、さらには面談に要する役員幹部の時間・労力等を考えると果たしてどの位のコストがかかっているかは算出困難なほどです。これだけの資金をPRに投入できる超優良大企業の成功例と同じように、プレスリリースを配信すればどんどん記事が出るようなことが、普通の企業の身の上にいつも起きるわけはありません。

 もっとも重要なことは、記者は本質的にプレスリリースが嫌いなのです。つまり記者の最大の望みは「特ダネ」だという本質的公理を忘れてはなりません。決して横並び情報ではない自分だけのネタが最上の贈り物なのです。 プレスリリースをばらまくことは、誇り高きジャーナリストにとっては、ある種の屈辱であります。それは他人と同じに扱われていることの証ですから。あるテーマに関心のある記者にとって、企業側によるプレスリリース配布=一斉発表は、孤高を保つジャーナリストの一
つの敗北であります。

 企業としては、むしろ戦略的に一斉発表に持ち込もうとします。企業にとり意図した発表であれば成功ですが、一方では、記者のプライドを傷つけることになっていることを理解しなければなりません。

 それを解する人だけが、真の達人の道を歩むことができるでしょう。