∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
第77条 楽天家であれ
世の中には、何事も悲観的に考えたがる人間と、何事も楽天的に考えたがる人間の二通りある。どっちがよろこばれるか。誰しも明るい楽天家が好きである。どっちに考えても、世の中の動きに変りがない以上、楽天家は自分の道を明るくし、人をも明るくする。明るいところには自然によい
道が開け易い。人間の運命は思う方向に動くという事は真実である。
――――――――――――――――
楽天とは、人生に対して明るい見通しをもつことであり、楽天家とは、物事を楽観的に考える人です。オプティミストOptimistであり、その反対は厭世家ペシミストPessimistと呼ばれます。
楽天家の特徴とは:
▽失敗の多い人
▽失敗しても何とかなると気にしない人
▽失敗を天の恵みとし、失敗を宝の山と し、失敗を学びの海とする人
▽次の楽しみを見つけることを楽しむ人
▽忘れっぽい人、忘れることが苦にならな い人
▽時々の小成功を大成功と小躍りできる人
▽小成功で恍惚体験する人
天は自ら助ける者を助く、で自分から求めていく方が小さな失敗を多く繰り返すことによって学ぶ回数も増えるのです。いわゆるケーススタディは架空の話ですが、自らの体験は、多種多様のリアルなケーススタディを数多くこなすことで、学びに深さと多様性を与えます。
失敗は無為に勝るのです。石川啄木も「失敗は成功よりも美しく、又更に成功よりも教訓と力に富めり」(『古酒新酒』)と記しています。もちろん、成功からも多くを学べることは当然ですが、どのレベルを成功と言えるのかは、各人の志の高低や深遠によって変ります。一般に成功を見做す
ことを当人はそうは思っていないことだって多々あります。
良い例がイチローです。数年前、打率が4割に近くまで上昇し、メジャー選手でも数人もいないという「4割打者」の可能性が見えた頃、ある記者が「すごいですね、4割真近です」と声を弾ませてインタビュー、イチロー曰く、「別に。全部打てれば10割です。6割は失敗ですから」と。私はこの時からイチローを見る目が変りました。こんな人が「真の楽天家」ではないでしょうか。
どのレベルでもいい。常に自らの可能性を見出し、それに賭けて少しでも、1寸でも、1ミリでも1点でもいい、ベターを目指す人は幸せなのです。イチローほどの大望でなくても、時折々の小成功で小恍惚を味わうのはそれなりにいい気分で、楽天家の特徴ともいえましょう。
大阪のホームレスの男性が(あるテレビの特集番組で)「今日日雇いの仕事で稼ぎ、一杯でも酒を飲めればいい。明日は明日の風が吹く」と笑っていました。しかし、それは一見楽天そうですが、その心境はかなり殺伐とし、「明日は明日で“冷たい”風が吹きつける」が本当のところでしょう。そこには前進が無く、向上は見当たらず、成功する気も失せています。
それは楽天家でなく、厭世家というものです。
「成功は全ての物を金にす」(徳富蘆花『自然と人生』)るのです。どんな境遇にあっても、どんな状況においても、失敗に挫けず、決して希望を失わず、自分なりの小さな成功を目指していく、その姿が楽天家の楽天家たる真骨頂なのです。
「天地は失せても失せざるものがあります。其のものを幾分なりと握るを得て生涯は真の成功であり、又大なる満足であります」 (内村鑑三『後世への最大遺物』)