第七十四条 見出す心
人は狭い心より、幅のある大きな心をのぞんでいる。誰もが気づかぬものの中から大発見をする発明家のように、心をとめて見出そうとすれば、どんな人間にもよいところはあるものだ。人として自分の良いところを見出されるくらい、大きな感激もなくよろこびもない。
真に人に好かれる人は、誰もが見出せない長所を見出してやろうとすることだ。愛と親切な心があれば、必ずその人の長所は見出すことができる。
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人の優れた価値を図る1つの基準は見えないものをいかにみるか?とも言えます。と言っても、一部の疑わしい心霊術とか超能力者のことではありません。普通の人がいかに見ようとするか?です。
通常の目に見えることは誰もが見ているし、問題があることも見えることは誰しも気が付く。しかし、見えないことは、誰かが気が付くものであり、誰かしか気が付かないものです。そこで、先ずその誰かになるようにしなければなりません。その誰かの中で、どの位深いところまで或いは、
どの位広い範囲まで気が付くか?によって、思いやりの深さに違いが出るのです。
それが深ければ深いほど、範囲が広ければ広いほど、人間は豊かになるし、より典雅な教養ある人物になることでしょう。
また、サービス業務においては、そんな人ほど、相手に満足を与え、さらには感動をもたらすことは間違いなく、この顧客は得意客になり、さらには上得意客へと深化していくのです。
顧客関係が深化すればする程、高度化すればする程、いいにくいことも云ってくれるようになります。
そこで、クレーム対する考え方を変えることです。クレームがあれば「またか!」「どんなヤツだ、しょうがないな・・・」などとマイナス思考で見るべきではありません。それは顧客からの温かい「励まし」であり、熱い「願い」として見るべきです。厳しい指摘はありがたいことなのです。
例えば、あるコンビニで買い物した時、レジ嬢の対応が悪ければ、次回は別のコンビニに行くでしょう。つまり、「お客様は黙って去っていく」のです。
クレーム(願い)をひとつひとつ解決すれば、お客様の要望に沿った品質へ着実に向上し、その結果技術力もあがるのです。言い換えれば、クレームとは改善点に関する“無料アドバイス”なのです。クレームをレベルに応じて不満・不平・苦情の三段階に分け、それぞれ「願望」、「要望」、「要求」と捉えましょう。つまり「不満」は「言うほどはないが」という「願望」。「不平」は具体的なことばの「要望」、
そして「苦情」は深刻な「要求」と分けるのです。クレームが無くなることはありえません。なぜなら、顧客=人間の要望には限りはないからです。とくに、「不満=願望」を察する能力が必要です。これは、普通の目で見ている人にはまったく見えません。見えないものを見るには、「心の目」
を光らせるのです。
武士はそれを「心眼」と呼びました。社員ひとりひとりが、お客様のクレームに感謝し、高感度の「クレームセンサー」になり、心眼を持って見るように努力する会社は、必ずや繁栄し、社会的にも信頼されるようになることでしょう。
「善し悪しは人にはあらで我にあり。
人の悪しきは我が悪(あ)しきなり」 (古歌)
生涯六十余度の勝負に一度として敗れたことのなかった剣聖宮本武蔵は、その著『五輪書』地の巻において、次のように明記しています。
「わが兵法を学ぼうと思う人は、この道 を行う心得がある。
第一に、邪(よこしま)なき亊を思う所。
第二に、道を鍛錬する所。
第三に、広く諸芸にふれる所。
第四に、様々な職能の道を知る亊。
第五に、物事の損徳をわきまえる亊。
第六に、諸事について真実を見分ける力を養う亊。
第七に、目に見えぬ本質を悟る亊。
第八に、わずかなことにも気を付ける事。第九に、役に立たぬことはしない亊。
このような原則を心において、兵法の 道を鍛錬すべきである。この道に限って、広い視野に立って真実を見極めなければ、兵法の達人になることはできない。この法を学び得れば、一人でも二十人、三十人の敵に負けることはない」
と目に見えない本質を見透すよう鼓舞しているのです。
「人の我れに辛きも人をとがめずて
我が身のわろき影とこそ知れ」
(古歌)