第五十七条 冗談上手

 几帳面で四角な人よりは丸くて冗談上手な人に人気は集まる。下手な冗談でも、言えない人よりはぐっと人に親しまれる。先方が冗談を言ってくれれば、こっちも冗談を言えるが、頑固に頑張っていられればちょっと口出しもできない。心に悪意さえなければ、いくら冗談を言ったところで人
の気にはさわらない。

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 「冗談」とは、1.ふざけて言う話 2.無駄話。英語ではjoke。
「冗談にもほどがある」「冗談口をたたく」という例文があります。

 巧みに冗談を言える人は、人を楽しませ、笑わせることを喜びとする人です。知的レベルも高く、機転が利き、工夫があり、人の心の動きを敏感に感じ取る感性をもっている人です。

 ショウペンハウアーは、人の幸福における最大の条件は健康であり、「朗らかさ」をもつ人が幸福になるひとつの要素であると言っています。
明朗な人は、明るい「冗談」をいえ、周りに明るい火を点す人だからでしょう。人の性向を「ネアカ」と「ネクラ」に分けることが流行った時期がありました。冗談が言える人は、そのままネアカな人と言えます。

 しかし、冗談はその定義にもありますように、あくまで、ふざけて言う無駄話です。できれば、その冗談は最小限に留めるべきです。そして、ユーモアに転化することができると一層上位の笑いにつながりま
す。ユーモアとは、「思わず笑いがこみあげてくるような、あたたかみのある面白さ、上品な滑稽・洒落」です。

 冗談は、いつでも言っていいわけではありません。時と場合を選び、かつ内容を適切に選択しないと、座を白けさせることもあります。また、多ければいいというわけではありません。皆が沈んだ気分の時に一人、変な冗談で笑わせようとしてもますます陰鬱になるだけ。場違いの時に場違いの冗談は、人間の品位を落とします。

 ところが、適切なユーモアはいつでも歓迎です。公式の場におけるスピーチや演説においても、非公式の場においても、さらには、冠婚葬祭などにおいても参加者の心を和ませ、温かみのある微笑みをもたらすものでしょう。

 機知に富むユーモア、思わず微笑みたくなる知的ユーモアが望ましい。

 一流の人物というのは、ユーモアのセンスを必ず持つものです。

 「冗談も度を過ごせばいたずらだ。
  焼餅の黒焦のようなもので
  誰も賞め手はない」              (『坊ちゃん』夏目漱石)

 「人の話のどういう場所にユーモアを感  ずるかということで、その人間の格調  が察せられる」
     (『項羽と劉邦』司馬遼太郎)