産経新聞神奈川版「ビジネスの羅針盤」
連載No.21


「トレーサビリティーの重要性」
 ・・・安全・安心与え企業も成長・・・

 BSE(狂牛病、牛海綿状脳症)、偽装表示問題などによって食の信頼性が揺らぎ、安全・安心に対する意識が先鋭化している中で、トレーサビリティーの重要性が一層高まっている。「食品の生産から流通まで一連の足取り(履歴)を追跡できる仕組み」を意味するトレーサビリティーを、あえて日本語にすれば「追跡可能性」とでもなるだろうか。

 昭和三十五年創業のハーベスト(株)(横浜、脇本実社長)は、給食サービス
や夕食材料宅配・弁当給食事業を手がける県内最大の食品会社。数年前、いち早くトレーサビリティーの重要性に着目、世界で最も進んだ仕組みを確立しているニュージーランド有数の牧場に責任者を派遣、牛の飼育場所から輸出手続完了まで徹底的にトレース(追跡)し、セーフティビーフの輸入を開始した。

 トレーサビリティを重視、お客様に安心を与えることで、着実に業績を伸ばし、二年前に百億円の売上を達成した。 先月初め、東京事務所を開設した同社の今年度目標は百二十五億円だが、M&Aなど積極的拡大戦略で数年後には、倍増を狙っている。

 “お客様の喜びを大きく(多く)することで会社も大きくなり、私たちも豊かになる”を経営理念とする脇本社長は、「今では、牛肉だけではなく、豚肉・鶏肉をはじめ、卵からダイコンなどの野菜類に至るまで、トレーサビリティーシステムを完成し、お客様に安全・安心を提供しています。その姿勢が喜ばれ、堅調な業績となっているのでしょう。国際都市・横浜生れの企業として、自信と誇りを持って一流企業の仲間入りを目指したい」と力強く語る。

 欧米では、トレーサビリティは法律で義務付けられているが、日本では今月、
”牛”に関する「特別措置法」が施行され、識別番号が印字された「耳標」の装
着と出生から食肉処理までのデータベース化が義務づけられた。しかし、“牛肉”
に関しては一年後になる。
 
 食生活が多用化する今日、原材料調達先や加工地は世界中に広がり、生産・流通過程は複雑化している。 県は、生鮮食品の調理にあたっては、できるだけ農薬を除去する工夫をするほか、畜産物の購入にあたっては、できるだけ農産地情報が詳細に表示されているものを選ぶよう指導している。