産経新聞神奈川版「ビジネスの羅針盤」
連載No.20
救急救命活動の普及を図れ!
・・・あなたは何ができる?・・・
高円宮妃久子さまは一年前にご逝去された殿下を偲んで回顧録を出版された。国民に大きな衝撃を与えた突然の死。救急車は八分で到着したが間に合わなかった。
“救命”には五~六分以内の手当が不可欠。呼吸停止から二分以内に人工呼吸などの心肺蘇生を始めると十人に八~九人の命が救えるが、五分では三人、十分後は絶望だ。“一分で一割”、救命率は低下する。ところが、救急車到着には通常十二~十三分かかる。
交通事故に遭遇、地震で患者続出、祖父が心臓発作、わが子が海で溺れたなど・・その時、自分に何ができるのか?
先日、NPO法人(特定非営利活動法人)「セントジョンアンビュランスジャパン協会」(樋口廣太郎会長)主催のシンポジウム「救急救命活動と生命の尊厳」に参加し、その活動の国家的・人道的意義と必要性を痛感した。この協会は市民に救急救命法の知識・技術の普及や災害時の救命活動などを行っている。
千年ほど前、エルサレムへの巡礼者に対する医療活動から始まった「セントジョンアンビュランス」活動は、「人類への奉仕」を理念として、今日ではエリザベス女王を名誉総裁に、会員三十万人、世界四十二カ国に支部を持つ世界最大の国際救急救命ボランティア組織である。日本では平成九年に活動を開始、現在賛助企業八十社余り、会員は千八百人で、全国的な普及にはまだ遠い。
欧米では五十人以上の学校、会社、病院、官庁などで一名以上の救急救命資格者を確保するよう法律で規定。日本では国レベルでの体制整備が緊急課題である。
折しも厚生労働省は十八日、医療従事者、救命士以外の人による、心肺停止した人に電気ショックで回復させる「除細動器(AED)」の使用に関する検討会の初会合を開いた。
国だけにとどまらず地方自治体や企業での主体的取り組みも不可欠。県内では、消防隊員でさえ資格保有者は全体の三分の一にとどまっている。
国際都市として、救急救命の意識を高揚し、ほかの自治体に先駆けて、救命資格者(ファーストエイダー)の増加、救急器具の設置など総合的な体制整備が求められる。