長期滞在と異国体験

 一九八十年代後半、オーストラリアに五年近く住んだ。ちょうど日本はバブルの最中、不動産関係者や個人資産家たちが来豪し、別荘やゴルフ場への投資ブームに沸いていた。
 当時は、政府のシルバーコロンビア計画により、退職後オーストラリアやスペイン・カナダなどへの長期滞在や移住が推奨された時期でもあった。
 平成四年ロングステイ財団(会長鳥井道夫氏)が設立された。ロングステイとは、海外に長期滞在しその国の文化や生活にも慣れ、国際親善に寄与する海外滞在型スタイルである。最近、財団以外にもその普及啓蒙を図るNPO法人などの団体が増えてきた。
 平成十三年発足の「新現役ネット」(岡本行夫理事長)もそのひとつ。中高年が豊富な経験を社会に役立て第二の人生を切り開こうと自発的に催しを行っているが、七月ロングステイ体験者の話を聞くなど勉強会を開始した。
 昨年設立の「ロングステイ推進連絡協議会」(今野時子理事長)は、日本人が海外に持つ別荘百数十を厳選し、所有者が使わない期間に安価利用できる仕組みを確立し好評だ。各地で毎月開くセミナーも盛況で毎回百名近い参加者。十日(金)には十三時半より平塚市民センターでも開かれる。

 ほかにも「南国暮らしの会」や任意団体の「ワールドステイクラブ」があり、旅行会社も体験ツアーを企画するなど関心が高まっている。フィリピンでは旧米軍基地を開放し、年金の範囲でも長く滞在できるよう政府レベルでの話も進行中だ。
 
 ロングステイにおける大切なポイントは、「生活費」「治安」「気候」「医療事情」「レジャー」。希望要件に合う国や都市について多面的な検討を行い、周到な準備ときめ細かい配慮が必要である。
 
 “ロング”とはいえ、数ヶ月も必要はない。毎日のように宿が変わる観光ツアーよりも数週間でもいい、異人種・異文化・異宗教の人たちと直に交わり、現地人の実際の生活や習慣に肌で触れる機会を持つことは、国際感覚を養い、人生を豊かにする上で貴重な体験であろう。