産経新聞連載No.15
電力危機と『そよ風発電』
・・・省エネは企業の社会的使命・・・
今回の米国東部・カナダ大停電は、大都市の“闇”を見せ付けた。国内では一部原子力発電再開にもかかわらず、首都圏の電力需給は依然として厳しい状況が続いている。松沢成文知事と中田宏横浜市長がノーネクタイに半袖シャツで「冷房温度二十八度」を呼びかけている。
横浜市では電力需要が増す夏季の三ヶ月間、全職員の家庭で10%カットを目指すほか、横浜高島屋は「でんき予報」で節電を率先して推奨している。一般企業でもエレベータ使用の制限や昼休み消灯など節電運動は広がりを見せている。
こうした状況の中、神鋼電機(佐伯弘文社長)が6月末に“そよ風”でも発電できる小型風力発電機を開発、10月から格安で発売することは画期的なニュースだ。軽いアルミ風車と垂直回転軸によりどこから風が吹いても羽根が回る。やや強い風(風速7メートル)なら月5千円(4人所帯)程度節約でき、一般家庭から公共施設まで幅広い用途が見込める。
佐伯社長は「問合せは先月4千件に達し、今でも毎日数十件と反響は予想以上に大きい。風力発電は風の強いドイツやオランダ、北欧が本場だが、風の弱い日本でも、地球環境にやさしい“そよ風発電機”の普及により、将来の電力不足にも寄与できる」と力強く語る。
一方、グリーン・エンジニアリング(松井弘匡社長)は、電力会社推奨の省エネ製品に独自の無線方式を採用、導入コストや工事期間の大幅削減ができる「ワットセービング」を拡販中。最大電力のピークをカットし、契約電力低減によって電力料金を削減し、不要な電力供給を抑えることが可能になった。
「特にこの夏は、小型スーパーから病院・工場などの大型施設まで幅広い顧客からの要望が急増している」と松井社長は自信を深めている。
企業として太陽光・風力など自然力発電の最大限利用を図るとともに、無駄な電力供給の削減も推進するのは社会的使命。さらに、消費者一人ひとりが、小まめに省エネを徹底することも小さいながら着実かつ最大の方法だ。家庭でもオフィスでも、各自が日々できることから実行しよう。