「景観保全への意識」
     ・・・欧州に学ぶまちづくり

 パリ・ロンドンをはじめ欧州の主要都市は、歴史的な建物から醸し出す独自の景観を何世紀も保ち、その荘厳な美しさは世界の観光客を楽しませる。さらに、感銘を受けるのは“田舎”の素晴らしさだ。教会中心の集落は、同じ屋根、色合いで町全体が独特な雰囲気を誇る。ロマンチック街道沿いのローテンブルグやマッターホルンへ続く花壇で飾られた個性溢れる町並みなどはそのまま美しい景観アートといえる。
 
 それは、新築・改築を問わず厳しい規制があるからだ。受け継いだ遺産を守り、後世に引き継いでいく。そこには、世紀を越え、政治体制を凌駕して流れる凛とした民族の誇りと確固たる国家の意志がある。

 一方、わが国はどうか? 都市・地方を問わず、「景観保全」意識の欠如により美観に欠け、その個性や統一性の無さに悲しさを覚える。
 そういったなか、今月十一日、国土交通省が「美しい国づくり政策大綱」を公表したことは喜ばしい。公共事業に「景観評価制度」を導入、「景観基本法」制定も目指す。田園の中に突然出現する派手な色彩の橋など公共建築物を建設する際に地域の風景にとけ込まなければ計画を変更可能、また地方自治体に景観を損なう屋外広告物の規制権限を付与するなど総合的な景観対策に乗り出す方針だ。
 海辺景観の悪化を招く消波ブロックは、平成十九年度までに神奈川・真鶴町など全国九箇所で撤去するなど自治体にも環境配慮を促す。また、歴史的な町並みが残る観光地などでは二十年を目処に電線の地中化を完了する計画。

 県は、「省庁と連携し、これからの取組み方を検討する」という。縄文文化の三浦、武家政治の地鎌倉・城下町小田原・ペリー来航百五十年の浦賀・横須賀など古代から近代までの歴史的建造物や由緒ある旧所名跡には、県の遺産として充分な景観保全を期待したい。加えて十周年を迎えた横浜のみなとみらいなどは、今後いかに調和した景観を創造していくかが課題である。
 
 国家百年の大計を念頭に、国・地方自治体、そして私たちにも、美しい国づくりを着実に行い、後世にしっかりと引き継いでいく使命がある。