「小さな国際的優良企業」連載NO.8
”・・・世界”相手に独創的提案
平成6年から4年近くのドイツ駐在中、欧州全域にわたりいろいろな産業に属する顧客を訪問した。 その時、独創的製品をもった片田舎の企業が世界を席巻しているケースが多いのに感銘を受けた。小さな部品一個でもその価値は完成品と同等に評価され、ブランド化するのである。
例えば、スエーデンの首都ストックホルムから北西に1時間ほどプロペラ機で揺られた港町に「ギャルピッタン」という社員4百人程度の会社がある。創業百年を誇る同社は、主に神戸製鋼から購入した超高級線材(ワイヤー)を特殊熱処理し自動車エンジンバネ用ワイヤーに加工する。そしてこのワイヤーで作られた数センチの小さなバネが世界の自動車メーカーに供給される。驚くことにその世界シェアは6割。ベンツ、BMWあるいはGMといえどもこのバネなしには生きていけない。
一世紀もの長きにわたって孤高を保ち続ける小さな国際的優良企業には尊敬の念さえ抱く。小なりといえども強である。
そんな企業が横浜にもある。自動車を中心にした工業製品の総合デザイン開発支援企業シバックス(柴崎繁昭社長)だ。国内外のカーメーカーに協力し、商品企画・デザインから設計・製作、さらには検査治具製造までを一貫して手掛けるまさにオンリーワン企業である。欧米ではカロツェリアと呼ばれるデザイン工房が自動車の付加価値を高める上で大きな役割を果たしているが、同社は更にワンランク上を目指す。世界のモーターショウに独創的なコンセプトカーを出展したり、お年寄り向けに大学と共同で電気自動車の開発にも取り組んでいる。
昨年は従来のデザイン様式を飛び越え「時代の感性をカタチにする」試みとして「STREETSTER KIRA」を発表した。これはストリート・ファッションのイメージを内外装に織り込み、斬新かつ独自性を追求した「ファッションとしての自動車デザイン」の提案である。
柴崎社長は「世界に配備した事業所が優れた創造性と先端技術を駆使して多くのクライアントに価値ある提案を行う」と国際企業への飛躍を図る。
今後、神奈川を基点に日本にもこのような企業が数多く隆盛していくことを期待したい。