【産経新聞連載No.6】
「行商のおばさんに本質」
・・・現業をサポートする意識を・・・
経営コンサルタントの小宮一慶氏はビジネスの本質は「行商のおばさんにあり」という。
おばさんは海辺で魚を「仕入れ」、山や町へ運び「付加価値を高め」て「売る」。そして代金を回収、その中から利益として生活費を賄い、リヤカーの購入など「再投資」を行う。
このサイクルがビジネスの本質でこれ以外の何ものでもない。企業の大小にかかわらずこれを繰返す。そこには総務、秘書、人事、企画といったエリートといわれる部署はない。数人で始めたベンチャーを想定すれば本来それらは「経費」であることが分かる。
その部署ができた理由は、企業規模が大きくなると専門の部署をおいた方が機能的で全体の効率が高まるためである。こうした直接、お客様と接していない部署の社員はビジネスサイクルにおける現業の「サポート部門」であることを忘れてはならない。
ところが油断すると、その部門が次第に強大な権力をもち内部志向になっていく。必要以上の資料要求や長時間にわたる無駄な会議開催などにより、外部(顧客)に接する現業部門の大切な時間を奪っていることに気がつかない。そうなると会社はおかしくなる。
「自分たちはコスト(経費)だ」と強く自覚し、現業部門がより創造的・効率的な業務を遂行できるために、何をすべきかをいつも考えてそれ以上の仕事をしなければならない。
このような視点で考えると、県庁はサポート部門、企業や商店は現業部門、県民が顧客。県庁が内部指向となり権力を振りかざして企業や商店の自由裁量を制限すると顧客である県民へのサービスがおろそかになることは明らかである。
しかも内外の権力者や利権におもねる怪しい輩(やから)が肩で風切り闊歩し、さまざまな不祥事が起こる土壌も生まれてくる。
県も一つの企業体である。崇高なるビジョン・理念に向かって将来へのしっかりとした方向付けを行い、権限委譲により現業部門の発展拡大を促進して、顧客に感動を与えるようなサービスが行き届く仕組みづくりに努めなければならない。
内部エリートを蔓延(まんえん)させる組織は一時的にどんなに栄華を極めようとも、いつかは衰退しそして崩壊する。ローマ帝国から最近の大企業の不祥事件まで、数千年に及ぶ人類の歴史がそれを証明している。